2007年5月22日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】農産物とくに穀類の生産地図が打ち続くドル安の影響で塗り変わりつつある。歴史的に農業王国として栄えた南部地方が収益率を上げて生産地としての王座に返り咲いた。
過去十五年間地価が安いことを背景に農業誘致を進めて生産王国となってきた中西部地方がドル安で収益率が悪化したことで、生産意欲を失って王座から滑り落ちた。この最大の原因は中西部地方のインフラ整備の遅れにあり、輸送費などの経費がかさみ、ドル安の状況ではアグロビジネスとして成り立たなくなったことにある。
これまではコモディティの国際価格の高騰により、インフラ整備の欠陥もカバーしてきたものの、先週からドル相場が二レアルの大台を割ったことで、もはやお手上げの状態となった。またこの状態が今後も続くとみられている現状は、今年の植え付けを見合わせる農家が続出している。
いっぽうで南部地方の心臓部といわれるパラナ州では、ドル安にもかかわらず好況に沸いている。この地方はインフラ整備が行き届いており、国内の穀物の五〇%以上を積み出すパラナグア、サントス、リオ・グランデの主要港に近いこともメリットとなっている。パラナ州北部ロンドリーナ市のトウモロコシの輸出の場合、粗利益が五六%で、輸出費を差し引いてもネット利益率は二八%となる。
これに対し、中西部ゴイアス州リオ・ベルデ市の穀物地帯では粗利益が五一%と大差ないものの、輸送費を差し引くと八・五%に大幅に減少する。実にネット収益は南部の三分の一に下がる。輸送費は南部が一五%なのに対し、中西部は四〇%以上となっている。
アマゾン地方で穀類栽培が盛んになった時期があったが、インフラ整備とくに輸出の積出港がないことや環境保護問題などで生産は減少している。このため中西部あるいは中北部の減少にともない、今や南部が宝庫になっている。
国家配給公団によると、中西部での二〇〇四/〇五年季と〇六/〇七年季の穀類値付面積の対比が一一・五%削減されて全国平均の倍近くに及んだ。南部ではわずか三・九%だった。
パラナ州と中西部の両方で農場を経営する農場もこれを裏付けて、中西部での今年の植付けは静観状態だという。この農家は〇四年、トカンチンス州の地価がヘクタール当り三〇〇〇レアルとパラナ州の五分の一だったことで一万ヘクタールを購入し、進出を決めた。同州は電力が余っており、積出港までの南北鉄道のプランがあったことで将来の宝庫になると予想したという。
しかしドル相場が二・三〇レアルを切ってからは収益率が五%台に落ち込み、生産性を失った。この間パラナ州では一五%の収益だった。今は土地を売出しているものの買手が現われず、土地維持費を銀行から借り受けている状態だという。