2007年5月22日付け
日本人墓地が唯一連邦史跡指定されていることで有名なサンパウロ州アルバレス・マッシャード市では、市役所と日系団体が百周年に向けて独自の事業に取り組んでいることが分かった。町の発展に貢献のあった日本移民の名前を通りに付けた新しい住宅区「ジャルジン・オリエンタル」を来年六月までにイナウグラソンをする予定で、その他、記念誌の出版などが進められている。また、日伯司牧教会は、日本初の海外布教使として同地で没した中村ドミンゴス長八神父を尊者にする運動をしており、百周年の機会に進展があるのではと期待が高まっている。
勝谷ルイス孝市長によれば、来年新しく拓かれる地区名を「ジャルジン・オリエンタル」にし、町の発展に貢献のあった日本移民の名前を通りに付けるプロジェクトが進められており、百五十軒の公共住宅の建設も進めているという。
さらに市立博物館にある市の歴史に関わる展示に、現状では日本移民に関するものが少ないため、勝谷市長は「もっと増やしたい」との意欲を語った。
勝谷セシリア市議(市長夫人)によれば、同市の日本移民百周年委員会は昨年発足し、計画を練ってきた。記念碑を建立するか、記念広場を作るかのアイデアが検討されているという。
加えて、市からの百周年に対する顕彰事業の一環として、初期に入植した移民などを調査して、日本人入植史をまとめて本として来年出版する計画も進められている。すでに数人の証言を集めはじめ、さらに戦前の写真などの収集も始めた。
州教育局主催の日本文化や日本移民史を学習する「VIVA JAPAO」プロジェクトにより、同市にある州立中学校では、毎年七月に日本人墓地で行われる「招魂祭」がテーマに選ばれ、生徒たちが研究した成果を来年に向けて取りまとめることになっている。
今年の招魂祭は七月八日午前九時から行われる。第八十七回を数えるコロニア最古の伝統行事の一つだ。アルバレス・マッシャード日伯農村体育協会の松本一成会長(70、長野県出身)によれば「戦時中には中止になったこともあったようだが、それ以外はずっと続けている」という。
日本人墓地に葬られて人の子孫ら約七百人が、毎年参拝に訪れる。遠くはサンパウロ市からもバスを仕立てて向かう人もいる。
開拓当初の一九一八年から一九四三年までの短期間に死亡した七百八十四人が埋葬されている。その内、約三百人が幼い子どもで、一歳、二歳という文字が刻まれている墓石が多い。
悲しい歴史を刻んだ植民地もまた、百年祭に向けて動き始めた。