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リオ世界選手権に向けて=ポ語版「姿三四郎」出版準備進む=講道館有段者会

2007年5月25日付け

 全伯講道館柔道有段者会(岡野脩平会長)は国際交流基金の協力を得て、日本移民百周年記念事業の一環として、明治時代の柔道家の人生を描いた小説「姿三四郎」(富田常雄著)のポルトガル語訳の出版準備を進めている。
 同会の理念でもある、試合での勝利のために技を競い合うのではなく、「柔道の修行を通じ己を完成し、世の補益につくす」という柔道の目的を青少年に伝えるために翻訳出版に乗り出した。
 柔道を志す若者の指針として、また柔道を知らない若い父母に読んでもらうことで、その子供たちに柔道を通じて日本古来の武士道の心を理解し、親しんでもらうことを目標としている。
 外務省は基金サンパウロ日本文化センターを通じて、翻訳費用(約四千ドル)と印刷・製本費用(約二五%)の助成金を決定。印刷製本にあたってはトッパン・プレスから支援を受けた。
 原作の第一巻の大部分が訳されており七百ページほどの長編になる。すでに翻訳は完了していて、現在編集、校正の段階に入っている。
 近年、ブラジルでは柔道と柔術の二枚看板を掲げて教えているところもある。岡野会長は「柔術を否定するわけではないが、柔道と柔術の違いをはっきりしたいし、道が分ってこそ術がある。そのため正しい柔道のあり方を書物に残して後世に残していきたい」と熱く語った。
 翻訳を務めた林慎太郎さんは「言葉を忠実に訳すとブラジル人には理解できないことが多い。作者の真意が伝わる訳を心がけた。特殊な時代だから明治時代の説明をしっかりした」と手応えを感じながら話してくれた。
 高校生や大学生、知識人、親日家といった人たちが好んで読むだろうと予想される。ブラジルではすでに「宮本武蔵」の翻訳書が出版されてベストセラーになっており、すでに販売の土壌はできている。
 同会では、九月にリオで開かれる世界柔道選手権の場を用いて出版発表をする予定。また、七月に行われる海外日系人大会とパンアメリカン日系人合同大会でも同書のアピールを行う考えだ。