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インフレ抑制こそすべて=中銀総裁、語る=損より益が遥かに多い=為替率に目標はなし

2007年5月30日付け

 【ヴェージャ誌二〇〇七号】中央銀行のエンリッケ・メイレーレス総裁はルーラ政権の発足以来、現職を貫いた唯一人の閣僚扱い政府高官である。歴代総裁では、在職四年五カ月で第三番目の長命総裁となる。政界と財界は諸手を挙げて通貨政策とインフレ政策の手腕を評価した。就任当初のインフレ二〇%は現在、四%で落ち着いている。正しい経済政策が実行されれば、産業は自ずから栄えるというのが同総裁の持論である。通貨政策がブラジルの構造改革と経済発展を遅らせることはあり得ないという。
 以下は、同総裁の持論に関する一問一答である。
 【経済成長とインフレ】インフレ抑制は国際信用の必須条件である。インフレが抑制されれば、金利も自動的に下がる。しかし、中銀はインフレ撲滅を宣言できない宿命がある。中銀がいい加減なことを言えば、企業は値上げを始めインフレが再来する。中銀には終戦がない。
 インフレ抑制が経済発展につながることを見せる必要がある。世界でも稀なハイパーインフレに悩まされた国が、現在のインフレ率に抑制したのも稀だ。そのため低率経済成長という副作用もあった。
 インフレは経済成長を押し留めるだけでなく、国家経済を崩壊させ、国民の貯蓄意欲を萎縮させ、投資も国際信用も壊滅させる。インフレで失うものは、インフレ抑制に払う犠牲より遥かに大きいのだ。
 【雇用創出とインフレ】米連邦制度理事会(FRB)のバーナンキ議長によると、雇用創出でインフレを管理するのが理想という。この段階をブラジルは克服した。中銀の使命は、通貨の購買力を守ることである。ブラジルがこの認識を体得するには、長い道程と苦渋があった。
 長いハイパーインフレの歴史から学んだのは、いかなる経済理論も疑心暗鬼を吹っ切れないこと。目標インフレ率という考え方がブラジルでは日が浅いために、経済発展の有効な方法であると全産業人の賛意を得るのが難しかった。
 【所得配分とインフレ】インフレ抑制即格差是正は疑問の余地がない。インフレ抑制が購買力の向上につながり、最低賃金や生活扶助金にも貢献する。消費市場の発展と雇用創出にも至る。管理されたインフレは、文明社会のインフレなのである。
 文明社会のインフレという習慣が、まだ理解されていない。現行のインフレ率を保持するため、現行レベルの基本金利が必要なのだ。この中で投資を呼び込み、社会格差を是正しながら経済成長を遂げて行くのだ。
 【レアル高とドル安】ドル通貨は全世界の通貨に対し弱気である。これは米国の貿易赤字が原因のグローバル現象で、高金利ではない。ブラジルを中心に見るなら、カントリーリスクが急低下した二〇〇三年、ブラジル経済の内容が見直された。貿易黒字と経済ファンダメンタルズ、すべて良し。為替率がそれを反映したのは道理である。
 レアル高のために輸出が落ち込んだという考え方は、正しくない。ブラジルは毎年、一二五万の正規雇用を生み出す。一部業種は下火であるが、産業全般は活気がある。多くの企業は生産効率を上げ、グロバリゼーションにシフトし、レアル高を克服した。
 【中央銀行とドル介入】中銀にインフレ目標はあるが、為替率目標はない。為替に関する中銀の役目は、外貨準備と外的要因による通貨危機に備えること。他に中銀は、市場が均衡を崩したり妥当価格を反映していない場合、為替介入をする役目がある。人為的に為替操作をするという見方は間違いだ。世界の為替市場には毎日一兆ドルの資金が動き、これを人為的に操作できる国はない。
 【米国経済とブラジル】リスクは常にあるが、国際情勢はブラジルに順風を送っている。現在のリスクは米国のインフレ昂進である。そのためFRBは政策金利の引き上げを行い、米国経済と国際経済に影響を及ぼしている。世界最大市場の米国発パニックには、どこの国も注意をする必要がある。
 【中国製品への対抗措置】本来なら市場開放は、競争により能率と生産性を高めるので歓迎される。だが高度の労働集約産業は、市場開放が裏目に出る。輸入枠を縮小し、輸入関税を引き上げて国内生産者を保護するのは、問題解決にならない。
 解決は生産性と能率の改善しかない。これは特に中国製品の直撃を受けた業種だけではなく、ブラジルの全産業にいえる。政府にできることは、税制改革と労働法の改正くらい。経済活性化が先決といってインフレの手を緩める経済政策は、間違いである。