2007年5月30日付け
学術的な研究も農業の技術革新も、「商売」にならなければ、先にすすまないようである▼さきに、この欄で西岡吾一さん(サンパウロ市モオカ在住)の「きのこの写真」話を紹介したところ、〃食用〃きのこの栽培のほうの専門家・館沢功之さん(アルジャ市)から電話をもらった▼西岡さんは、老後の趣味で、昔取った杵柄の写真技術を生かし、美しい「野のきのこ」の写真を撮影してきた。取材先は植物園やオルトフロレスタルだった。最近、単に撮影、写真制作にとどまらず、野のきのこ(多くは有毒であろうが)の名を知りたい、と欲が出た。さらに有毒でないものは人口栽培できないものだろうか、と興味を広めた▼館沢さんによれば、野生の大半には、案外名がないのでないか、ということだった。というのは、世界に七千種ものきのこが存在するが、その七〇%は名無しのごんべ。きのこ研究は日本が一番すすんでおり、ブラジルはちょっと……。毒については、人が食べて死ぬ、というのはごくわずか。食べても死にはしないけれども、多くは不味いから食べない、のだとか▼食べて美味しいのは、すぐさま改良が加えられ、大量生産の方法が研究されたのだろう。いま、街の店頭に並んでいるのは、その成果……▼ただ生産において「低コスト、大量、美味」を確立するのはたいへんだ。そして肝心の利益があればこそ、技術革新にも熱がはいる。西岡さんの趣味は楽しく貴重だが、それはあくまで別次元の世界か。(神)