2007年6月2日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十八日】夫が妻に対し暴力をふるう家庭内暴力を罰する新法令が実効されて六カ月が経過したが、この期間の妻による告訴や被害届が一八・八%減少した。
新法令施行以前の二〇〇五年十月から〇六年三月までの告発が一六万三四四一件だったのに対し、昨年九月に発令されて以降の〇六年十月から今年三月までは一三万二六四九件で一八・八%減となった。
しかし犯罪専門家によると、だからといって家庭内暴力が減少した訳ではなく告発が減っただけだという。この背景には新法令が厳罰をもって処することにある。これまでは暴力行為の現行犯以外は拘束されず、扱いも子供同士のケンカや隣人との口論程度の軽い量刑で、暴力犯(夫)は日常必需品(セスタ・バジカ)を納入することで釈放されていた。
新法令では告発があると、裁判にかけられ三カ月から三年の実刑となる。また一度告発すると取り下げがきかなくなる。これが妻に告発の二の足を踏ませる原因になっていると指摘している。これまでは夫の暴力に対して警察でのお灸程度ですんだものが、実刑になると収入の道が途絶えるのが打撃となるからだ。
新法令はルーラ大統領によりマリア・ダ・ペニャ法と命名された。家庭内暴力で夫に暴力をふるわれ国際的に波紋を呼んだ女性だ。この女性は一九八三年、二度にわたり死の危険から逃れている。一度はピストルで撃たれ、二度目は電流ショックを受けて溺死を図られた。幸い命は取り止めたものの生涯車椅子生活を強いられた。
同法令は単なる暴力行為にとどまらず、性的強要や資産やモラルの迫害も対象となっている。これらの駈け込み寺となる女性警察署の第一号はサンパウロ市都心部ドン・ペドロ公園に一九八五年に設置された。今では全国で三〇七カ所にあり、そのうち四〇・七%に相当する一二五署はサンパウロ州に集中している。