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エタノール先進国の使命=途上国、伯に注目=先進国の旧体制構築阻止を=他の追従許さぬ実績

2007年6月6日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙五月十六日】米国ミズーリ州サンルイス市で世界食糧フォーラムが開催され、四十カ国から三三〇人の代表が集まり、アグリビジネスの未来について意見を交わした。ブラジルからは国際貿易研究所(ICONE)が参加し、次のようなテーマについて報告した。天然資源とバイテク、小生産者、投資、インフラ、物流、再生など。最も注目されたのは食糧とエネルギーの関係で、エネルギー市場で取引されるコモディテイが穀物と飼料市場に与えるインパクトである。
 再生エネルギー需要の急増と政府の奨励政策が、バイオ燃料を増産に次ぐ増産でフル生産させている。ブラジルは、その結果について豊富な経験を有する先輩である。ブラジルでは地域にもよるが、エタノールを最高四四%ガソリンに混ぜている。経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均混合率は六%だ。
 またブラジルは、サトウキビ栽培では農地やかんがい用水、気候など自然条件で優り、技術力でも他の追従を許さぬ実績がある。現時点ではサトウキビが、エタノールや砂糖、発電などで最も経済的に有利な植物とみられている。
 最近のニュースでは、欧米が六年間にエタノール消費を倍増させる計画がある。問題は欧米の政界に農業ロビーなる強力なグループがあり、莫大な補助金を払って非能率的生産を保護していることだ。米国はトウモロコシ、EUは麦や菜種、大根を原料とするが、採算性では亜熱帯植物に太刀打ちできない。
 フォーラムで来る十年の課題が二つ指摘された。一は石油代替としてエタノール生産を途上国市場を中心に発展させ、中南米やアフリカ、西アジアの主要産業とする。二は経済と社会政策、環境の三本柱でエタノール産業を支える。
 サトウキビ収穫の手作業を容易にするため枯葉に火を放つと、活性窒素による大気汚染も問題を起す。しかし、機械化をすると労働者二五万人の職を奪い、路頭へ放り出すことになる。地球温暖化とバイオ燃料は、一つの世界的システムでつながっている。これまでシステムは、部分的な論議ばかりでグローバルな討論がなかった。
 この世界的システムは、国単位で論じる内容ではない。コモディデイ市場の卸販売の段階から、システムの軌道修正を行う必要がある。例えば欧米の経済支援を受けると、エネルギーと環境問題が先進国の一存に左右されるからだ。
 先進国の補助金制度が、時代に逆らって保護貿易を増長している。結局先進国がエタノールでも旧体制を構築し、世界は元の木阿弥に陥る可能性がある。先進国の独占市場になると、資金不足の国は経済的窮地に追い込まれる。このような事態を避けるのが、エタノール先進国ブラジルの使命ではないか。
 バイオ・エネルギーに世界の関心が高まる今、ブラジルの出方に注目する途上国は多い。エタノール産業を自国のインフラに据え、技術開発や税制問題、電源開発、通商政策、設備投資で国づくりを考えているからだ。