2007年6月6日付け
五月十八日、オウリーニョス日伯文化体育協会(AECO)での昼食交流会の後、同地の計らいで、最近話題のエタノール生産をするウジナ・サンルイス(USL)の工場を見学する。
講堂に集められ、心理カウンセラーのマリア・テレーザさんが概要を説明し、労働を始める前にやるラジオ体操のようなものを体験し、紹介ビデオを鑑賞した。
「こんなにたくさんのジャポネースは生まれて初めてみた」とテレーザさんは驚く。ふるさと巡り一行と地元文協有志のあわせて百人以上が押しかけたから、無理もない。
一九五一年にイタリア移民のカリアット兄弟が始めた農場が元になり、現在では二万六千ヘクタールもの敷地があるという。ちなみにインターネットで調べたところ、お茶どころで有名な静岡県の茶栽培面積(〇五年)が二万三千ヘクタールというから、この農場の方が広い。
サトウキビ中心の栽培だけでなく、現在ではアルコールと粗糖の生産まで一貫して行っている。
畑作業もほとんど機械化されているというが、それでも従業員は全部で四千人もおり、工場だけでも四百人。敷地内には教会やガソリンスタンド、サッカー場、バス停まである。近隣の労働人口のかなりがUSLに依存していることは容易に想像できる。
アルコールの年間生産量は七千五百万リットル、粗糖は三百万袋(五十キロ入り)、動物のエサとなるレヴェドゥーラは千五百トン。
これでも全伯では「中規模」だそうだ。
社内だけでサッカーチームが二十四もあり、かつてガゼッタ・エスポルチーバ紙(現在サイトのみ)に「社内サッカー大会としてブラジル最大」と認定されたという。
熱心に質疑応答が行われ、応答を担当したジェフェルソンさんは、重量の二〇%分の粗糖が生産されるとか、一台のサトウキビ刈り機で労働者八十人分に匹敵する仕事をするなどと答えていた。
次に、バスに乗ったまま広い敷地内を回った。
「ありゃ、温泉か!」。バスの中から声が上がった。建物の向こうの運動場ぐらいスペースのところから、もうもうと水蒸気がわき上がっている。説明員に聞くと、工場で使った熱湯を冷やすために、いったん空中に散布しているのだという。
バスは左右に巨大なプラントをみて、中央に進む。左側は壁に囲まれて中がほとんど見えない粗糖工場で、右側がプラントが剥き出しのエタノール工場だという。「エタノールは爆発する可能性があるから開放的な作りに、粗糖は食品にもなる混ざりものがないように壁に囲まれている」との説明に一同納得。
粗糖は一袋千二百キロの大袋に詰められ、トラックに載せられてコーペルアスーカルへ卸される。そこでさらに精製されて食用にされ、サントス港から外国へ積み出される。
午後四時、オウリーニョスのみなさんに別れを告げ、一行は次の目的地ソロカバへ向かった。
(深沢正雪記者、つづく)
拓魂=県連・ふるさと巡り=汎ソロの移民史名所を訪ねて=連載《1》=アルバレス・マッシャード=埋葬者の3分の1が幼児=日本人墓地で開拓初期偲ぶ
拓魂=県連・ふるさと巡り=汎ソロの移民史名所を訪ねて=連載《2》=アルバレス・マッシャード=「涙が止まらなかった」=当初は畑の隅に子供を埋葬
拓魂=県連・ふるさと巡り=汎ソロの移民史名所を訪ねて=連載《3》=プ・プルデンテ=奥ソロ初の中学校設置=独自の図書館や史料室も
拓魂=県連・ふるさと巡り=汎ソロの移民史名所を訪ねて=連載《4》=オウリーニョス=「毎日会館集まって活動」=45年ぶりの同航者再会も