2007年6月9日付け
福島県飯館村の「愛の句碑づくり事業」の俳句全国公募に、過去五年間投句して、入選(黛まどか選)し、句碑が同村に建てられたブラジル在住者たちの〃同窓会〃ともいうべき親睦会が、さきごろサンパウロで行われた。出席者は、林とみ代さんら七人(一人欠席)。和歌山県出身者が多かったことから、休会していた「くろしお句会」の復活を決め、第一回再開句会が五月十七日、和歌山県人会館で開催された。
「愛の句碑づくり事業」は、飯館村が御影(みかげ)石の産地であることから、「石文化」を内外に発信して、村振興につなげようと企画されたもの。二〇〇一年から五年間公募が行われ、毎年五十句が入選、合計二百五十句が、御影石に刻まれ、村内の村民の森遊歩道に建てられている。
ブラジルからの投句者は五年間で八人が選に入った。半永久的に保存管理される二百五十の句碑のうち、八つがブラジル在住者のものだ。このほど、菅野典雄村長から八人に対して豪華な愛の句碑づくり事業写真集『愛あふれる村いいたて』が送られてきた。二百五十句と美しい村の写真などが収録されている。〃同窓会〃の八人は、四月十五日の親睦会の際、寄せ書きしたサインを飯館村に送った。
五年間に「愛の句碑づくり事業」に寄せられた総句数は一万五千四百句である。ブラジルからの数は定かでないが、相当数応募されたとみられる。〇二年のみ入選者がなく、残る四年は一~三人の入選をみている。
◇〇一年
草笛を吹き出稼ぎの父を恋ふ 猪野ミツエ
◇〇三年
夜の秋や母の遺せる鯨尺 広田 ユキ
◇〇四年
父母の愛の如くに大泉 菊池 信子
終の地とブラジル愛し秋の風 佐藤 節子
秋の旅夫の遺影と語りつつ 林 とみ代
◇〇五年
トラクターに新妻乗せて花野ゆく 細梅 鶴孫
リハビリの吾れに従きくる夏帽子 須賀吐句志
寒紅を永久の別れの妻にひく 岡本 利一
猪野ミツエさんは、〇一年入選を果たしたあと訪日、飯館村の現場に立ち、自身の句碑と対面を果たしている。また、林とみ代さんは、五日午後「日本に私の墓石はないけれど、句碑が永久に遺されている」と破顔一笑した。
「愛の俳句」の入選者同士は、今度さらに発展した。猪野さん、広田さん、林さん、須賀さんが和歌山県人であることから、「くろしお句会」の復活を合意したのである。木原好規県人会長の厚意で会館を無償で借りられることになった。今後隔月一回の割りで県人以外の人も大歓迎の句会を行う予定だ。五月十七日の句会の作品はつぎのとおり。
虫すだく夜のしじまの深まりぬ 秋末 麗子
母の日や子等それぞれに長所あり 猪野ミツエ
一葉だに同じ彩なし柿紅葉 菊池 信子
一人の灯一つ点して残る虫 小西 成子
馬耕とは今では昔冬耕す 佐藤 節子
生かされて来し歳月や秋の行く 玉田千代美
俳縁をつなぐ句会や五月尽 林 とみ代
さはやかに杖を捨てたと友の声 原 はる江
天高しくろしお句会再開す 広田 ユキ
穂芒や子供の多き移民墓地 山本 紀未
日々精進趣味晩学のホ句の秋 平間 浩二
寒椿落ちて決断未だつかず 須賀吐句志