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左翼改革ゆっくり進行中=PT・PSDB連立も?

2007年6月13日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙五月二十日】リオデジャネイロ連邦大学のダニエル・A・レイス歴史学教授が、ブラジルはルーラ大統領の再選後灰色の霧に包まれ、野党は骨抜きのロボットと化し、思想的な真空地帯となって迷走中と評した。
 国民の圧倒的支持を得て続投が決まったルーラ大統領(労働者党=PT)は、伝統的左翼から清濁併せ呑むつかみ所のない左翼へ脱皮を試みている。それでも大統領が左翼であることに変わりはない。
 しかし、優柔不断さが産業界を漂流船にした。早急な政治改革が国民から切望されている。ブラジルの改革は、軍政から民政に移ったように「ゆっくりとワーワーいいながら」進むのが伝統的特徴らしい。
 同教授は、政府の保護を受け、何の規制もされず何もしない労組天国を非難した。しかし、頼みとする野党に政治的な率先力は見えない。期待する左翼急進派も、社会の少数派を基盤としたので伸び悩んでいる。何故こうなったのか。
 ルーラ大統領は、適当な左翼改革を打ち出そうとした。それは国民が長い間、その方向を望んでいたのだ。大統領の適宜な改革方針に魅せられ、国家的状況が出来上がった。PTとブラジル民主社会党(PSDB)の一部交流が、その傾向を象徴している。その潜在的動きは二十年前から、ブラジル社会に実在した。
 PTとPSDBは与野党であるが、思想的に大差がない。セーラサンパウロ州知事がルーラ政権に入閣しても、立派な企画相や労相として通用する。その反対にセーラ政権へルーラ大統領が飢餓撲滅相として入閣しても同じ。腰掛けが二つあって隣同士で座るなら、両党はオシドリ政権になる。
 ルーラ大統領の考えは、多くの国民から支持を得た。大統領は適宜な改革政策で国際経済と穏やかに調和し、国内政策は過激な社会運動や低劣活動を懐柔しているからだ。PTがこの政治姿勢を保つなら、これに代わるものが見当たらないから、長期政権になる可能性がありそうだ。
 次期大統領がネーヴェス知事になるかセーラ知事になるか分からないが、この適宜な改革路線が次期政権の基本ではないか。ルーラ政権は、伝統的左翼から近代的左翼へ適宜にメタモルフォーゼした。しかし、路線変更によって何かを失った様子は見えない。
 ルーラ政権は政権就任前の二〇〇二年に路線を変更したのではない。一九八九年の大統領選敗北から徐々に変更し、ルーリズムへ乗り換えたことを国民は気づかなかった。この変更に納得しなかった極左派が徐々に場を失い、MST(農地占拠運動)や都市運動へ合流して行ったのだ。
 これまで選挙の行方を決めた中流階級や産業界は迷走しているのではなく、ルーラに賭けたのだ。それが、二〇〇六年のルーラ対アウキミンによる大統領選の決選投票にハッキリ見えた。国民は、痛みを伴わない静かで緩やかな改革を望んだのだ。所得格差の是正よし、但し自分の財産には手を付けるなという意思表示なのだ。