2007年6月14日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】マンテガ財務相は十二日、為替差損で経営不振に陥った業界のために一〇億レアルの輸出支援包括案を上程したと発表した。同案は設備投資への免税や社会経済開発銀行(BNDES)の低利融資、輸入縫製品への関税見直しなどである。また補助金を受けていない製靴や皮革、繊維、被服、家具、電子機器、自動車などの企業へは、特別融資を設ける。財務相は、外国のライバル企業が享受する特典をブラジルでも同様に供与すると述べた。但し世界貿易機関(WTO)が、不審感を抱かないよう補助金制度は避け、融資条件で対抗する考えらしい。
BNDESは国税庁の協力で三種類の融資制度を設け、三〇億レアルを用意した。特価価格で輸入される縫製品に対しては、関税率を見直す。製品の六〇%以上を輸出する企業は、資本財の購入に際し社会保険融資納付金(Cofins)や社会統合基金(PIS)の納税を即時免除するという。現行法規では、製品の八〇%以上を輸出する企業となっていた。
包括案は、レアル通貨高騰による損失を防ぐ一策らしい。為替差損で経営不振に陥った年商三億レアル以下の企業が、輸出奨励つき特別融資の対象となる。政府は十分な国際競争力がない業種にも、新たな包括案を草案中である。
すでに融資を受けて分割決済中の輸出企業は、二〇%の公債付与がある。運転資金向け融資は、年利八・五%から六・八%に下げた。設備投資への課税は、七%から五・六%へ引き下げた。融資期間は二十四カ月間となっている。
BNDESは、融資によって企業が新商品開発に力を入れるよう期待している。工業の技術水準が低い国への輸出は、品質幅を広くするよう指導する。縫製品の関税はキロ当たりで課税し、原料価格以下の超安値輸入を防ぐ。
専門家筋は、今回の包括案が一時しのぎで気休め程度の効果しかないとみている。ブラジルの輸出問題は原価が高いことにある。需要の喚起も困難である。為替に関し通貨バスケット論を唱える財務相と業界の見方は全く異なる。
レアル通貨の高騰により、全業種の輸出価格がドル換算で割高となっている。しかし、政府が特典を与えたのは、六業種だけである。例えば自動車の場合、政治的配慮と統一中央労組(CUT)の手前があるからだ。鉄鋼やホテルなどは対象からはずされた。
同包括案は、問題の核心を突いていない。財務省は、生産部門における中国やインド、韓国の脅威を理解していない。これらの国では、ブラジルのような重税や従業員の負担金がない。問題は為替ではなく、財政なのだ。減税実施には、政府の経費垂れ流しから改めることだ。
マンテガ財務相は、従業員給料に対する福利引当金の削減をめぐっては無為無策だ。資金コストの均衡化で、国際競争を戦おうと財務相は考えている。エンブラエルの輸出金融計画(Proex)が、WTOによって阻止されたことを知っているはずだ。ライバルがWTOへ提訴しなければ問題ないが、財務相は考えが甘い。