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エネルギー争奪戦始まる=不可欠な消費管理=伯はエタノールで世界制覇=「資源枯渇はない」

2007年6月20日付け

 【ヴェージャ誌二〇一二号】かつての戦争は食糧争奪戦であったが、現代はエネルギー争奪戦の時代という。石油に代わる緑のエネルギーを求め、世界各国は国運を賭けて奔走しているとエネルギーの権威ダニエル・イエルジン氏がいう。エネルギーに関しては、世界の要人が戦略を決定する前に必ず同氏を訪ねる。同氏は、サンパウロ市で開催されたエタノール国際会議に招かれ来伯した。来る三年は、ブラジル・エタノールの時代であると予言。政府の政策が正しければ、ブラジルはエタノールで世界を制覇すると喝破した。
 以下は、同氏とのエネルギーに関する一問一答。
 【新エネルギー資源と国策】来る二十年のエネルギー需要は止まるところを知らない。その結果エネルギー消費で、人類は壁にぶつかる。エネルギー危機を避けるため適切な消費管理が必要になる。現在直面する最大のリスクは、民族主義という名前のエネルギーの政治利用だ。
 この戦略を一九七三年に初めて使ったのはアラブ諸国。世界第二の産油国イランは、大いに政治に利用し、世界経済を不安定にさせ、問題を起こしている。
 【政治利用から威嚇へ】米中間が石油のため距離を置き始めたことが信じられない。ロシアが石油を武器にEUを揺さぶることも信じられない。しかし地政学的には、事実その道を歩んでいる。ロシアと中国が石油で同盟する可能性も、否定できない。
 急務はエネルギー源の管理であり、その未管理はリスクになる。そのためエネルギーの政治利用は早く辞めさせる必要がある。それが今世紀初頭に課せられた重大な宿題だ。
 石油に代わるエネルギー資源を発見することは、議論の余地がない。世界各国はエネルギーの闇市場を排し、新エネルギー発見に投資を惜しまないこと。しかし、代替エネルギーは高価で時間を要することを覚悟する必要がある。
 【途上国の燃料需要】二〇三〇年のエネルギー消費量は、現在の七五%増という予測がある。石油の需要増は五〇%増で寒気がする。中国やインドは、経済発展を持続するために大量のエネルギーを必要としている。貧しい一般庶民の所得増加と中流階級への上昇は、新たな問題となる。一般庶民の可処分所得が増えれば、自動車の所有台数と燃料消費が増える。
 【資源枯渇とその後】エネルギー危機は耳にタコができるほど聞いた。一般庶民にはどこ吹く風だ。しかし、新エネルギーの開発技術も日々進み、将来は夢のエネルギーさえ発見される。それを考慮しないで、やたら憂慮する専門家が多い。
 米国では一九七〇年から、本格的に新資源の研究をしていた。だから、来る三十年以内には研究成果が出るはずだ。
 ブラジルのエタノール生産技術も称賛に値する。ブラジルは一九七〇年、原油のほとんどを輸入した。ブラジルはその後、原油の自給化に成功し、海底油田の試掘でも世界に稀な最先端技術を開発した。
 【原油は枯渇するか】地下にあるものが、消えてなくなることはない。自然に吹き出た時代は終わり、歴史が訂正されるだけ。原油の枯渇は一八八〇年にも言われた。二度の大戦終了後もいわれた。
 原油の最盛期は終わり、なだらかな衰退期に入った。これまでの油井方式は、二〇三〇年が限度と思われる。以後は、油岩採集や海底油田の時代に入る。また油井からの汲み上げも、こぼれ防止率を二五%上げる必要がある。
 【石炭の排気ガス】石炭は国際経済にとって背骨のようなもの。ブラジルでは石炭依存度は低いが、世界の発電量は四〇%を石炭に頼っている。中国の石炭発電は桁違いである。中国には石炭に代わる燃料がないし、石炭の埋蔵量は無尽蔵に近い。一酸化炭素を排出しないクリーン石炭の製造技術を開発する必要がある。
 【エタノールと食糧】ブラジルではエタノール生産量がダントツに多く、食糧への影響が少ないので楽観しているが、米国ではトウモロコシの燃料化が社会問題になった。穀物市場のトウモロコシ相場が五〇%高騰し、その他の穀類や飲料、加工食品が便乗した。これは米国の経済均衡を崩し、国際市場へ波及する。農業生産者はよいが、経済市場に必ず影響が出る。
 【エタノールとバイオ燃料】ブラジルは、世界のバイオ燃料研究所である。エタノールに関しては、三十年の技術的蓄積と超低コストが他の追随を許さない。ブラジルのエタノール産業について、世界の投資家や燃料関係者から問い合わせが殺到、エタノールに関する日々の新しい情報と取引の可能性を尋ねている。ブラジルは、まさにちょうど良い時期のちょうど良い人のようだ。ブラジル政府が三年以内に必要な措置を講じるなら、ブラジルはエタノールで世界を制覇する。
 【植物繊維エタノールとサトウキビ】植物繊維がサトウキビを圧倒するかは、ブラジル政府の国際市場での対処次第である。まずブラジルが成すべきことは、エタノール外交である。次に国際間のクレジット協定。二十年以内にブラジルを中心に中南米諸国が世界のエタノールの七八%を生産する。ブラジル外交が成功するなら、計算通りになる。