ホーム | 日系社会ニュース | 高齢層の開拓者!=76歳、現役女性サーファー=波にのる房江さん、礼子さん――夫や息子の〃承諾〃があって=動機「ただ興味あったから」=今サントス市の〃有名人〃

高齢層の開拓者!=76歳、現役女性サーファー=波にのる房江さん、礼子さん――夫や息子の〃承諾〃があって=動機「ただ興味あったから」=今サントス市の〃有名人〃

2007年6月21日付け

 七十歳を過ぎてサーフィンを始め、有名になった人がいる。サンパウロ州サントス市に在住の浦本房江さん(76)と紺野礼子さん(78)。今でも週に三回サーフィン学校に通う現役のサーファーだ。テレビや雑誌、スーパーマーケットの広告や体育大学の卒業論文にも取り上げられ、評判を聞いた市内の中高齢者がわれもわれもと、学校に殺到。市の観光にも役立っているという。房江さんは「大したことじゃないのよ。ただ面白いから続けてきて、もう五、六年になります」と謙遜しながら応えた。
 房江さんがサーフィンを始めたきっかけは「ただ興味があったから」。夫も息子も「好きなことをしたらいい。自転車はこけたら怪我をするけど、サーフィンは落ちても水だから大丈夫」と承諾したとか。
 市役所が主催する無料のサーフィン学校に、五、六年前から入学している房江さん。ブラジル人の講師について、指導を受ける。
 「先生は最初、私の歳を聞いて黙ってしまって。でも本当に親切に教えてくれますよ」。泳ぎ方だけでなく、サーフィンやスポーツの歴史、天気や波の見方なども教わる。
 まず入念に準備体操。浅いところで、サーフィンの基礎であるパドリング(ボードの上に寝そべって泳ぐ)の練習を中心にはじめ、波にのれるよう段階を踏んでいく。
 礼子さんは、房江さんに誘われて学校に通いだした。「気に入っている」と笑顔を見せ、「青い海、白い雲。浮かんで、この景色の下にいたら何もいえなくなります」。
 昨年からボードの上に立つ練習をはじめ、最近やっと波にのれるようになったという二人。房江さんは「年金生活になって、ようやく始められました。風邪に強くなったかなとも思うけど、海から出たあとには、体が軽くなったようで気持ちがいいの」。
 七十歳を過ぎてからサーフィン――。房江さんと礼子さんの話を聞き、一昨年ころから取材の依頼が舞い込むようになった。市の観光局を通じて取材に応えてほしいと頼まれ、房江さんの嫁のマルシアさんは「お母さんは有名人なの」と嬉しそうだ。
 サントス市は、二人の例をもとに去年から中高年向けのサーフィン教室を開設した。昨年は約三十人、今年は約六十人の応募があり、「歳は関係ない」と勇気付けられた人がどっと参集。その反響に市の関係者は驚き、教室のイラパジ・ド・シルバ・カエターノ講師も房江さんらを「高齢サーファーの開拓者」と評した。
 また、海は塩度が高いために、水中で身体にかかる負担が少ない。盲人や身体障害者らも参加して、リハビリに役立てている例も少なくない。脳溢血で倒れ、体に不自由を覚えていたアニバル・オリンさん(73)は「サーフィンで治った」と元気な姿を見せていた。
 房江さんは、自身の記事を掲載した雑誌が飛行機内で閲覧されていることをあげ「私は飛行機に乗ったことないのに」。「何かができるのは一つの楽しみ。個人でやるから人にも迷惑を掛けないし、もっと上手になりたいなって思っています」と笑った。
 取材当日は、サーフィン学校開設十五周年記念パーティー。房江さん、礼子さんは、サントス市長から十五周年記念のディプロマを受け取った。四歳児や体育大学の学生らに交じって、二人のはじけた笑顔が印象的だった。