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州政府日本文化教育プログラム「VIVA・JAPAO」の現場をゆく=連載《上》=オザスコ=〝ニッポン〟学ぶ子供たち=生徒自身がテーマ選んで=原爆、歌やYOSAKOIも

2007年6月21日付け

 今年二月に発表されたサンパウロ州政府の日本文化教育プログラム「VIVA・JAPAO」が始まっている。オザスコ市の州立校「テルモ・コエリョ・フィーリョ・マジョール」(パトリシア・リヴェロ・ベラト校長、生徒二千五十人)では三月から、「日本へバンザイ!」と題し、同プログラムを実施している。生徒たちがそれぞれに興味のあるテーマに取り組み、今月十五日に発表会を催した。「今までに行なったどんなプログラムより、生徒自身が関心を持っています」とベラト校長。義務教育の中で他国文化を学ばせるという試みは、ブラジルでも初という。子供たちが〃ニッポン〃を学ぶ現場を訪れた。(堀江剛史記者)
 記者が教育局担当者と同校を訪れると、屋内球戯場で約六百人の生徒たちが拍手で迎えてくれた。
 取材に訪れた十五日は、三月から生徒たちが取り組んだそれぞれのテーマの研究成果を発表する〃ニッポン文化祭〃。
 そのスタートを切ったのは、箸をかんざし代わりに髪に挿し、赤い手作りの法被に芸者を意識した化粧で現れた女子生徒約二十人によるYOSAKOI・ソーラン。
 続いては、ヴィニシウス・デ・モラエス作詞の「ローザ・デ・ヒロシマ(広島のバラ)」と日本で人気の歌手BOAの「エヴァーラスティング」をパンデイロやビリンバウなどブラジルのリズムと、バイオリンなど弦楽器をバックに七人が合唱。驚いたことに全員がソラで歌っている。
 選曲し、リードボーカルを務めたアリーネ・バンデイランテス・ソウザさん(18)は、「歌詞は一カ月で覚え、意味もインターネットで調べた」と上気した表情で語り、パトリシアさん(16)、リンコン君(17)も「別の日本の歌を練習してみたい」と笑顔を見せた。
 担当にあたったレチシア・デ・クレメンテ教諭は、「楽譜もない日本語の歌をみんなよく練習したと思う」と生徒たちを褒め称えた。
 合気道の模範演技もあり、気合の入った掛け声が会場を沸かせた。参加した子供たちは、師範から記念メダルを首にかけられ、誇らしげな表情を見せていた。
 生徒たちに案内され、二階に上がる。子供たちがそれぞれ関心を持ったマンガ、生け花、日本の歴史などの課題がテーブルに展示されており、発表内容は壁新聞となって廊下の壁を埋め尽くしていた。
 「授業では習わなかった後遺症のことや土壌への影響などが分かった」とジャシエリさん(16)、アンドレイアさん(同)。
 広島、長崎の原爆の歴史に関心を持った六人で、壁の大きなスペースを使い、研究成果を発表。「過去の問題ではなく、今の問題でもある」と二人は、しっかりした口調で声を揃えた。
 各教室も展示会場となり、生徒たちはお互いに深めた日本の知識を披露しあっていた。(つづく)