2007年6月23日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十二日】世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は二十一日、途上国の大きな期待も空しく、何ら合意に至ることなく決裂した。自由貿易と障壁削減のため二〇〇一年に立ち上げたドーハ・ラウンドは、米国、欧州連合(EU)、ブラジル、インドの主要四カ国・地域(G―4)で最後の詰めに入ったが、交渉は難航を極めた。同ラウンドの決裂は、蟻の穴による堤防決壊という見方がある。ブラジルを含む一部代表団は、WTOそのものが本来の役割を果たせないことで崩壊の危機にあるとみている。
ポツダムで開催されたドーハ・ラウンドは閉幕まで残すところ二日となったが、ブラジル代表団がこれ以上の交渉は無駄であると席を蹴った。続いてインド代表団も退席した。近年では見られない大荒れの会議で侃侃諤諤(かんかんがくがく)、非難と痛罵の応酬だった。
欧米代表団は、ラウンド決裂の責任がブラジルとインドにあると声明を発表した。同代表団は日程がまだ二日あり、交渉継続の用意があるという。欧米代表団による農産物の譲歩と、ブラジルとインドによる市場開放の間にある溝は、ついに埋まらなかった。
WTOのラミー専務理事は、ポツダム会議が多国間貿易の基本となるもので、二〇一三年まで続く長期戦という。しかし、ブラジル代表団が二〇一三年までWTOは存在しないと苦言。アモリン外相は、ラミー専務主催のWTOダンスパーティは続行すると声明を発表した。G4パーティが不調なら、G150パーティに交代するという。
同外相はブラジルとインド代表団がポツダム到着前、先進国と途上国の均衡貿易を前提とした、農産物に関する欧米政府案の打診があったという。ポツダム会議での欧米代表団は、先の打診を忘れ、一方的に圧力を掛ける策略的な出方をした。同外相は欧米政府に対し、あの打診が会議で騙し討ちにする落とし穴であったのかと抗議するようだ。
欧米代表団の戦法には、途上国を袋小路に追い込み、意のままに屈服させる下心がミエミエだという。欧米代表団のブラジル・インド非難声明は、会議以前に作成された悪意のシナリオであり、交渉による合意など初めからない八百長会議だったとアモリン外相は述べた。
しかし、WTOの決裂について国内でも色々な見方がある。不平等な協定を結ぶ位なら、何も協定しないほうがよいという説が正しいなら、ブラジルは二つの苦汁を飲む覚悟が必要だ。ブラジルは、ドーハ・ラウンド決裂罪という札つきの国になる。これからの二国間貿易交渉に、この札が付いて回る。
ガット協定からWTOへ関税交渉が移行した当時、国際貿易はグリーンルームと呼ばれる米国、EUの一存で運営された。徐々にその他の国々へも扉が開かれ、ブラジルなど途上国も招かれるようになったのはつい最近のこと。だから農業補助金制度は、途上国が国際貿易へ参入する踏絵みたいなものらしい。
国際通商には、貿易交渉の決裂も安泰の保障もない。新しい事態が開かれるため、生みの苦しみがあるだけだ。いままでの閉塞状態が八月まで続くなら、次期米政権が交代する六年後まで現状が続くようだ。