2007年6月26日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】世界貿易機関(WTO)新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の進展を図るべく、ドイツのポツダムで開かれていた米国、欧州連合(EU)、インド、ブラジル四カ国(G4)閣僚会合の交渉が決裂したことを受けて、欧米代表が事態の収拾に向けて慌ただしい動きを見せている。
WTO本部のあるジュネーブに移ったアモリン外相によると、欧米代表団から相次いで会議の申し入れがあったという。同外相は欧米が打開策を講じるのを目的としているとの認識を強調した上で、ブラジルとしては会談に応じる用意はあるが、あくまでも先進国側が開発途上国に対し、柔軟な姿勢を示した上で譲歩することが大前提だとの考えを明らかにした。
G4閣僚会合では途上国側が先進国側に対し、農産品の関税引き下げと国内農業補助金の実質的な大幅削減を要求したのに対し、先進国側は途上国に鉱工業製品の関税引き下げなどによる市場開放を迫った。結局三日間にわたる協議で妥協に至らず、会期を二日間残したまま物別れとなった。
双方の非難の応酬が渦巻く中で、欧米側の避難を一身に浴びた形となったアモリン外相は、金持ち(先進国)が貧困国(途上国)を踏みにじる行為だとする自説は曲げないと、強硬な態度を維持している。その上で、米国のシュワブ通商代表と事前協議をしていながら会議でシナリオを塗り換えられたことについて、同代表から後刻、誤解が生じたと弁明の電話があったことを明らかにした。
これによりアモリン外相が憤然と会議の席を蹴ったことの信ぴょう性が明らかとなった。WTOでの交渉経験がある複数の加盟国は、アモリン外相の立腹の真意が図れず、反米感情をむき出しにしているベネズエラのチャベス大統領の感化を受けて、ブラジルはベネズエラナイズされたのかといぶかる向きもあった。マンデルソン欧州委員(通商担当)もアモリン外相の態度に、理解に苦しむと側近に洩らしたと伝えられている。
ラミーWTO事務局長はアモリン外相との電話で、ブラジルの合意なくしてドーハ・ラウンドの進展はあり得ないことを強調した。これに対し同外相は、協議が再開されたらもはや中断は許されないとの決意を表明した。
ブラジル政府は、G4閣僚会合におけるアモリン外相の言動は理にかなったもので、決して「過激」ではないとの認識を強調している。その上でG4にこだわらず、さらに十カ国以上の途上国の結束を固めて、発言力を高めることが肝要だとの見方をしている。