2007年6月26日付け
【アサイ発】百周年に向け各地で準備を進めるパラナ州。ブラ拓四移住地の一つ、アサイ(トレス・バラス移住地)でも、記念事業として城を建設する計画が進んでいることが分かった。アサイ市(ミシェロ・アンジェロ・ボン・テンポ市長)とアサイ文化連合会(小岸穎郎会長)が中心になって進めているもので、ブラ拓が所有、市に寄贈した土地に三階建ての城を建設。多目的ホールや同地の歴史資料室なども設置する壮大な計画だ。予算は約四百万レアル。市、連合会ではすでに文化省のルアネー法申請に向けて動いており、今後、企業などに協力を呼びかけていく考えだ。
今回のプロジェクトは、移民百周年の話が始まった頃に、アンジェロ市長が提案したことに始まる。数年前から同市長は城計画を考えていて、今回発表した。
ブラ拓(有限会社ブラジル拓殖組合)が造成した四移住地の一つ、トレス・バラス。同市長は幼い頃より日系人と生活を共にしていたために相当な親日家だ。そのため、同市に日本人の功績を少しでも残せることができればと考え、城を建設することを発案した。
城を建てることにしたのは先人たちの功績や文化的なものを守っていくために、「守る」という意味を込めたかったからだという。
計画によれば城は三階建てで、日本庭園付き。土地の総面積は約一千平方メートルで、床面積は一階が五百、二階が四百、三階が三百平方メートル。
城の入り口ではアサイ市の特産品や日本の物を販売するお土産コーナー、一階ではアサイ市近郊の団体などが使用できる多目的ホールを設置。二階に茶室とアサイ市への入植当時の資料などが展示できる博物館を置き、三階に協力者や姉妹都市の紹介などを行うスペースが設置される予定だ。
建設予定地はブラ拓が同市に譲った土地で、その土地を日本人の功績を残すためにと提供されている。二〇〇九年四月までに建設を開始しなければ、同地は同市のものに戻ってしまうという。この場所は同市のほぼ中心地にあり、小高い山の上にあるために、アサイ市に入るとすぐに目に付くところに位置している。
同市長は来年の移民の日(六月十八日)までには完成させたい意向だが、全て完成するまでには最低二、三年の計画が考えられている。
今回の城の模型や日本庭園の構想は川下滉(ひろし)JICAシニアボランティアが行っており、場所を決めるのにも協力した。
城と日本庭園の建設にはクリチーバに日本庭園などを建設したコンストゥルヤマ会社が一手に引き受ける。
城の予定費用は四百万レアル(約二億四千万円)。資金の大部分は、文化的な計画に対して大企業の税金の一部を使うことができる連邦文化省ルアネー法による調達を計画しており、今月十九日にはその許可を得るため、ブラジリアで行われた百周年委員会でもプロジェクトの紹介を行っている。
同市では建設にあたり、技術協力などを兵庫県に要請している。また、城の屋根の形や角度、門入り口は北向きなどの細かいことも日本の城と同じようにしようと計画している。
現在、同市との姉妹都市はないのだが、兵庫県たつの市に姉妹都市提携の要請を行っているという。
近年、若者が都市へと移動する傾向が目立ってきている。そのため、今回の城ができることにより観光客を増やし、将来の発展を目標としている。
小岸会長は「ブラジル内唯一の城計画を成功させたい。反対もあるだろうが、建設が始まると多くの人が協力してくれるはず。石を一つ積むのを手伝ってくれるだけでも大きな助けになる」と期待を寄せながら話してくれた。
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同連合会では同プロジェクトに協力してくれる企業などを募集している。協力者には城が完成した時に名前を掲載する予定。詳細等はアサイ文化連合会(043・3262・1447、小岸会長)まで。