2007年6月29日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十八日】パン・アメリカ大会が十五日後に迫る中、リオデジャネイロ市北部のファベーラ(スラム街)、アレモンで一二〇〇人の市警と軍警、一五〇人の陸軍特殊部隊が二十七日、麻薬犯罪組織の掃討作戦で出動し、七時間以上にわたる銃撃戦の末、十九人の死者と流れ弾による負傷者九人を出した。犯罪組織が麻薬の保管と武器庫に使用している家屋で集会が行われるとの情報を市警情報部がキャッチし、奇襲作戦を決行した。同作戦でコカイン四〇キロと大麻一一五キロ、手榴弾五〇個、小銃五丁、ピストル五丁、対空機関銃二丁、弾薬などを押収した。
リオの治安当局が実施した犯罪組織掃討としては、最も大規模な作戦の一つとされる。当局が死者は全員犯罪組織のメンバーだとしているが、住民は市民をも巻き込んだ作戦だと抗議した。同地域には五月二日から軍警が常駐し、すでに三十六人の犠牲者と七十二人の負傷者が出ていた。
合同部隊は二十七日午前五時、指令部に集合。スラム街アレモンの高台グロッタで午前九時、コマンド・ヴェルメーリョ(CV)のアジトとされる、ばら色に塗られた家屋を包囲した。CVメンバーは、手榴弾で突破口をつくり、抵抗しながら逃走した。
スラム街アレモンの人口は三〇万人で、大都市の中の迷宮都市である。リオ州保安局のベウトラメ長官は、アレアルとシュベイロ、マチーニャ地区で当局の監視が手薄となったため、組織が麻薬や武器を隠していたと話した。そのため、五月から組織の動きを内偵していた。
「卵の殻を割らずして、ケーキはできない」。スラム街アレモンへの強行介入は、避けて通れない苦肉の策だと同長官はいう。同スラム街に治安当局が常駐して二カ月。長期駐在になる予想だ。武器弾薬の持ち込みルートも掌握した。治安部隊引き揚げは、急がないようだ。
CV総司令部はスラム街アレモンにあり、麻薬の物流から経理を管理している。リオ州の自動車盗難のほとんどはCVが関係している。犯罪組織の撲滅には、ハイチ平和部隊が執った市民の協力と、諜報機関の情報を得る戦略が有効だと軍部が助言する。
押収した三〇口径の小銃四丁は、二十五日の掃討作戦に投入された攻撃ヘリをも撃墜できる性能がある。犯罪組織を武装解除するためにリオ州は、苦汁の体験を味わったことを認識すると同長官が述懐した。
作戦を午前九時開始と決めたのは、学童が教室へ入り、街路に子供の往来がなくなる時間帯だからだ。いわば銃撃戦の始まる危険な時間帯に、ノコノコと街路へ出てくる者がいた。当局は、もっと多数の無知な犠牲者が出ると見込んでいた。
リオ州政府はパン・アメリカ大会を、社会の害虫駆除を実施するチャンスに利用するらしい。それを告発したのは、人権擁護会議へ出席のためスイスを訪問したマウリシオ・カンポス氏である。治安当局の強行作戦で麻薬と銃器の押収量や拘束者数は減ったが、犠牲者数は四〇%増え、犯罪組織の縄張り争いが日常茶飯事になったという。