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■記者の眼■―――静岡県で残念な騒動=日系3世の土地購入拒否

2007年6月29日付け

 昨年四月に静岡県で日系ブラジル人男性が土地を買おうとしたが、地元日本人らの反対にあって購入できなくなった。それに対し、静岡地方法務局が「今後、同様の行為を繰り返すことがないように自戒してほしい」という文書を、同五月に地元住民と不動産会社あてに送付していたとの記事が、二十八日付け静岡新聞などに掲載された。この件に関するブラジル側での反応を聞いてみた。
 同紙と朝日新聞記事を総合すると、昨年四月、日系ブラジル人三世の男性(30)が不動産会社を通して一戸建て用の土地二百平米を購入しようとした。
 不動産会社が地元住民に購入者がブラジル人であることを伝えると、同地の自治会の班(当時十二世帯)が問題視し、多数決をとったところ、三分の二の班員が反対。その結果を不動産会社に伝えると、同社は地元の意向に配慮し、男性に土地を購入できない旨伝えたという。
 その日系男性は昨年五月、同法務局に袋井支局に「人権侵害」の申し立てをし、今月五日付けで同法務局長名の「説示」が班と不動産会社に送付された。
 静岡新聞によれば、その班の男性は「不動産会社から四世帯のブラジル人が来ると言われた。ブラジル人は悪い人ばかりではないが、いきなり四世帯では文化の違いもあり、自治会になじめるか心配だった」と当時の心境を明かした。
 朝日新聞によれば、同班のある女性は「ブラジル人の事件が多く報道されていて、何か起きたら怖いというイメージがある」と話したという。さらに同紙では自治会の会長のコメントとして「できれば入ってきてほしくないというのが本音。今後、ブラジル人がここに土地を買うとなった場合、どうしたらいいか考えたい」という。
 同紙が日系三世に取材したところ、「ブラジル人のイメージが悪いのはわかる。でも自分はまじめに働いていて、日本語も話せる。あいさつに行って自分を見てほしかったが、『来なくていい』と言われた」という。その男性は同市内の別の場所に土地を購入して住宅を建設したという。
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 「なんとか仲良くやってほしい」。ニッケイ新聞の取材に対し、ブラジル静岡県人会の鈴木静馬会長(袋井市出身)は祈るように語った。「日本でブラジル人のイメージが良くないのは知ってる。でも、この日系三世は別に犯罪者ではなく、まじめな労働者でしょ。日本の産業に貢献している」とのべた。同県人会は八月に創立五十周年式典を行う予定だ。
 ブラジル法曹関係者が集まる伯日比較法学会の渡部和夫理事長は、「日本のマスコミはブラジル人の起こした事件を大げさに報道しすぎる。悪くなったイメージをどう回復するかがこれからの課題」と提言した。
 日系社会を代表するブラジル日本文化福祉協会の山下ジョルジ副会長も「日系社会の二〇%が日本で生活をする時代になっている。他人事でなく、こちらの問題でもあるという認識が大切」との考えを示し、さらに特定の個人が起こした事件を「ブラジル人」とひとくくりにして報道する日本の風潮にも疑問を呈した。
 日本で土地を買って家を建てるのは、日本人にとっても一生の大仕事。まして外国人である日系三世にとってはさらに大変な決心が必要だったろう。
 そこまでするのは、日本を気に入って永住したい、ぜひとも子供を日本で育てたいとの強い気持ちを持っている日系人であるのかもしれない。少なくとも、会ってみても良かったのでは。       (深)