2007年6月30日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】ブラジル弁護士会(OAB)は地元住民の告発により二十八日、リオデジャネイロ州治安当局によるファベーラ(スラム街)アレモンの包囲作戦で射殺した十九人のうち十一人は無実の一般市民であると疑問を呈した。OAB人権部会は犠牲者の死体解剖立会いを要請したが、当局から阻止された。当局の発表では全員射殺というが、地元民の抗議では、計画的殺害によるものもあるという。また当局は死者十九人と発表したが、実際は三十人以上とみられている。
二十八日現在、同スラム街で合鍵作成業を営むグラルトさん(26)など、八人の遺体が遺族に面会を許された。いたいけな二人の幼児と変わり果てた父親の最後の面会となった。他は十三歳から十四歳、十六歳、十七歳の未成年と二十一歳、二十二歳の青年、四十一歳の成人。
すでに確認されている死者は三十人。さらに草むらや雑木林へ逃げ込んで、射殺された者も多数いる。用事で付近を通りがかり地面へ伏せるよう命令されたが、動作が遅いため射殺された身体障害者がいる。もはや死人に口なしである。
OABへ地元住民の抗議が殺到した。投降後の射殺ではなく、刺殺された人もいる。軍警は作戦参加の振りをして商店や一般民家に押し入り、金品の強奪を欲しいままにした。駐車中の乗用車の窓ガラスを割り、ラジオを盗み取った。マスコミは当局の積極果敢さを賞賛すると、地元住民には評判が悪い。
犯罪組織の撲滅という名のもとに、下層階級市民の無差別殺りくが行われる。治安当局の犯罪対策は大雑把で綿密な事前捜査を行わない、貧乏人即犯罪人の建前論先行であるとOAB人権部会が訴える。
無差別殺りくが行われたのは、スラム街アレモンのグロッタ地区とノーヴァ・オランダ地区であった。包囲された五〇〇平方メートルに、コマンド・ヴェルメーリョ(CV)の幹部フェレイラが潜んでいるとみて家屋十一戸を潰し、銃弾の雨を降らせた。
スラム街アレモンの包囲作戦の成果を記録し、当局は別地域の作戦に役立てる計画だ。リオデジャネイロ市は、全ての高台が犯罪組織の根城になっている。当局は全域に同時挑戦はできないので、一つづつ潰す計画である。最も犯罪発生率の高いアレモンが最初の標的だ。
敵はCVだけではない。犯罪組織は活動中のものから発足間もないもの多数が、同市にひしめいている。ADAや第三コマンド、シャッペウ・マンガベイラ、ヴィガリオ・ジェラウ、都心のファレットなど。
犯罪の根を断ち切ることなく、上からの圧力だけで対処する当局の手法には、賛否両論がある。C・メンデス大学都市治安学部のレングルベル教授は、当局の犯罪一掃作戦がCVにとっては運動会気分に過ぎないという。当局の作戦は、市民の間に混迷と憤慨を引き起し、市民を敵に回している。
犯罪組織は当局内の汚職構造を熟知している。当局と組織の銃撃戦は、市民にとって迷惑なお祭りだ。掃討作戦のような点数稼ぎは、知事の州政と企画に反映されることはない。もっと犯罪低下につながる基本政策を考えるべきだと同教授が提言する。