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マラリア原虫を媒介する=蚊はどこで発生するのか?=坂口成夫さんの「体験」に=松栄孝さんの見解

2007年6月30日付け

 マラリア原虫を媒介するハマダラ蚊はどんなところに発生するのか――さきに「身近なアマゾン」を書いた松栄孝さんの記述にひっかかる個所があった、と坂口成夫さんが「マラリヤ(マラリア)こうして治す」のなかで指摘した。坂口さんの文はほとんど生薬について書かれたものだったが、今回、松栄さんは、坂口さんのその知識に敬意を表した上で「マラリアの発生について、私の意見を聞いてほしい」と書簡の形でつぎの一文を寄せた。
   ◇  ◇
 アマゾンに入り始めた初めの頃は、便所にハンモック暮しでしたが、最近はアマゾンの水を生でお美味しく頂いています。慣れれば大丈夫ですね。
 そんな毎日の観察から、流れのある魚の棲んでいる川や、流れがなくても魚の棲んでいる水溜りには蚊は発生しないように思っています。坂口先輩のおっしゃるとおり、川の流れのある川沿い部分ではマラリアはないと思います。
 それではなぜ内陸部にマラリアが発生するか、というと、陸地の乾いた部分にカポクロやガリンペイロというインデイオ以外の人間が住み着くと、どうしてもその付近が不潔になると思うのです。彼らはインデイオと違って道具を使い、井戸を掘って不潔な水溜りをつくる。そんな水溜りに蚊の幼虫の天敵はいません。だから、デンギやマラリアが発生するのではないか、と考えています。
 そんな場所で発生した蚊が、本能から人里近い湿地帯(清流もあるだろうと思います)に移行して、生殖に必要な動物の血液を求めて夕方にさまよいでるのではないか、と思うのです。ですから付近に人の住んでいない地域では、マラリアについての情報も得られないわけで、マラリアの存在しているのは必ず付近に人家のある所ではないでしょうか。
 だから、未開インデイオにはマラリアもデンギもインフルエンザも肝炎も百日咳もないので、彼らが文明に接しなければこれらの疾病にはかからなかった。それがインデイオ以外の人間が入ることで、それらの致死に至る疾病が流入した、と私は思っています。
 一昨年でしたか、ポルト・ベーリョ(ロンドニア州都)のポスト・デ・サウーデ(保健所)の庭に、数十のハンモックで寝ているインデイオを多数見つけました。「何をしているのか」ときくと、「部落の大半がマラリアにかかって部落では治療できないからここで暮して治療している」ということでした。
 インデイオ部落にマラリアが入って、FUNAIがなかったら絶滅してしまった部落が多数あるはずです。本来マラリアがこの地で大発生したら、すでにインデイオは絶滅していると思うのです。すでに絶滅したファミリーも多いと思いますが。
 私は、内陸の生物の棲む清水でハマダラ蚊が発生するのでなく、どこか人間の作っている汚水で蚊が発生しているものと考えています。
 私の言いたかったことは、長年魚の採集をしていて、魚の棲む清水、濁水にはボウフラの生育する余地はないということです。人間、それも文明の匂いの足跡のある場所の、魚の棲まない汚水でひっそりと蚊が発生し、マラリアが蔓延しているものと考えています。インデイオの友人が言ったことは私は間違いでない、と今も私は思っています。
 文明から完全に閉鎖されたインデイオ部落にはマラリアはないはずです。なぜなら感染症に全く免疫のない彼らが奴隷流入時代から現在まで生きてきていられたからです。
 松栄さんはサンパウロ在住。電話5077-2828