2007年7月4日付け
子供のころから持っていた空への憧れを、形に――。世界一の凧をあげるべく奮闘している日系人、山里謙さん(68、二世)を招いて、ブラジル掃除に学ぶ会は二十七日、講演会「私の凧人生」を開催した。山里さんはこれまでにパウリスタ凧あげ大会で八回連続で優勝しており、九九年には三千三百四十四枚の連凧をあげて、連凧の世界記録をつくっている。現在は、面積(大きさ)において世界最大の凧をあげることを目指しており、千九十四平方メートルの巨大な凧をすでに完成させた。記録の実現に向け、実施日や場所の選定に余念がない。
「十歳くらいのときから飛ぶものがなんでも好きでね」と山里さん。鳥、飛行機、虫、パラグライダーなど、飛行するものに対するその思いは、六十年近くたった現在、凧作りに没頭して過ごす「凧人生」へとつながった。
山里さんは、工業大学(FEI)で機械工学と労働保障を勉強したのち、サンパウロ大学大学院労災予防課を卒業。これまでに何十回と大会やコンテストで賞をとり、パウリスタ凧大会創作部門では、七六年からの八年間、連続優勝に輝いた。九一年に定年退職後、凧と凧工学の会社を立ち上げて、本格的に凧作りに専念している。
「凧をあげている時は、先祖とコミュニケーションしているみたい。そういうエネルギーをもらっているみたい」と、山里さんは顔をほころばせる。二〇〇二年の世界大会では、三十二カ国の国旗をつなげて、空に舞い上がらせた。
山里さんの凧作りのテーマは「教育と文化」。「凧は、教育と文化を伝えるのに本当にいいんです」と力説する。凧の形、力のかかり方、天気、風の移り変わりなど、凧作りには、科学や数学、物理の要素が詰まっている。「動物の形の凧を作れば、生き物のことも教えられる」。凧あげの日の晴天を願って〃てるてる坊主〃を吊るせば「日本文化も知る」。
月に二、三回、小、中、高校、大学をまわり、青少年、学生を相手に講演会やワークショップを行っている。「凧は、スーパーの袋、使い捨てのプラスチック製品からも作ることができます。環境を考えて、リサイクルにも取り組んでいる」。
講演では、「揚げるのは簡単だけど、下ろすのが大変。風速は八から十二が最適で、マセイオでの風が最もいい」など、凧を揚げるときのアドバイスや、注意点を説明した。
現在、山里さんが取り組む世界最大の凧は、飛行中面積が千九十四平方メートルで、二十分以上空に留まらせることができれば、世界記録となる。
これまでに四百八十一平方メートルの凧をあげて世界三位を記録したほか、記録外で六百平方メートルのをあげることに成功している。新記録樹立には、百四十人のアシスタントが必要で「電力を使わずにやりたい」と山里さん。
「九九年から作り始めて、八千六百時間を費やしたよ」と笑いながら、「費用もかかるけど、他の誰かにできるのなら、自分にもできる。不可能はないと信じている」と、力強く語った。世界記録更新に向け、現在スポンサーを募集中だ。同氏のホームページ=http://www.pipamodelismo.com.br