2007年7月7日付け
戦後生まれの首相と持て囃された安倍政権が剣が峰に立たされている。久問防衛相の原爆失言から辞職に到る不明朗な動き、松岡利勝農相の自殺もある。安倍内閣が発足してからまだ8ヵ月なのに税調会長の本間正明氏が不祥事で辞任に追い込まれ、佐田玄一郎行革相も政治資金の不適切処理で辞職と閣僚らの不始末が多すぎる。これでは、安倍晋三首相の責任が問われるのも、仕方があるまい▼政界の人事というものは、ものすごく難しいものらしい。ノーベル平和賞の佐藤栄作総理は「人事の名人」とされるほどに有名で内閣改造などでは巧みな閣僚指名で政界の難局を乗り切ったそうだが、安倍首相の人事は、何処から見ても巧いとは申しかねる。こんなに短い期間に3閣僚が、失言や疑惑だらけの金銭問題で自裁や辞職したのが、何よりの証拠であると言っていい。柳沢伯夫厚労相にしても「産む機械」の暴言がある▼国会を延長して教育3法や国民投票法などを可決したのは評価できるけれども、今の政治情勢では参院選挙でも自民の苦闘は免れまい。そんなところへ年金記録不備という大きな政治社会的な問題が露呈され政界は混迷している。基礎年金番号に統合されない「宙に浮いた」記録が五千万件もあったのだから、これはもう弁解の余地がない▼安倍首相の唱える「憲法改正」は大切な政策ではあるが、国民にとっては「年金」の方が重い。生活が掛かっている年金を重視するのは当然であって―ここにも与党の弱みがある。新党日本が分裂したりで参院での与野党逆転は難しいかもしれないが、間違いなく29日の参院選は激戦になる。(遯)