水力発電所建設を許可=環境保護院=申請から2年経過=12年に稼動開始予定=環境対策に不安残る
2007年7月11日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】環境保護院(IBAMA)は九日、二年振りにロンドニア州マデイラ川のジラウ、サントアントニオ両水力発電所の建設を許可した。同水力発電所の建設は、政府の鳴り物入り経済活性化計画(PAC)で要の一つとされている。総工費は四八〇億レアル、二〇一二年には稼動開始の予定。IBAMAは同許可に、桟敷の土砂を堤防材に使用や魚類の生態系保全、河水の水銀による汚染管理など三三項目からなる条件を付した。許可申請は〇五年五月に行われ、官房長官の通告期限から三十九日遅れで日の目を見た。
ジラウ、サントアントニオ両発電所は、四四五〇メガワットを発電し、イタイプー発電所の半分に相当する。建設許可が遅れたためロウセフ官房長官は、五月三十一日の期限付きで圧力を掛けた。それでもIBAMAは抵抗した。
ルーラ第二次政権の政治生命を賭けたPACが頓挫したことで、大統領府がIBAMAに通告をした。大統領はIBAMAのランゴーネ次官も含め幹部全員を更迭し、生態系保護と発電所の建設許可で同院を二分割した。IBAMAのマルガリード総裁は、ようやく重い腰を上げた。
同総裁はストで罷業中職員の中から八人を召集し、国際機関に発電所の建設許可を打診させた。国際機関の一つは、欧米の水力発電所建設に意見書を提出した国際復興開発銀行(IBRD)である。
マデイラ川流域開発はルーラ政権の目玉でありながら、頭痛の種であった。紆余曲折した揚句の三月、IBAMAは非許可の結論に至った。同川に棲息するナマズは、産卵のためタービンの中を潜ってペルーやボリビア地域へ上る。稚魚も危険を冒してタービンの中を下る。そのため多くの魚類が犠牲になるという理由であった。
許可の条件としてIBAMAは次のように指示した。大型のナマズは、放水路を登ることができないため支流を造る。魚類は五〇〇種類が棲息するが、発電所建設は魚類別の産卵期に合わせた繁殖場も設置する。建設中は河川敷が乾燥するので、生態系保全用の臨時河川も造る。
発電所の建設現場は生態系の均衡が崩れるためコウモリとマラリアなど病原菌の異常繁殖が起き、近隣の住民に感染する危険がある。カメやワニの移動や湖底に沈む貴重な植物の移植も行う。伐採した樹木を水没地外へ搬出する。トゥクルイ発電所建設では、伐採樹木を除去せず水中に放置したため、メタンガスが発生している。
ようやく発電所の建設許可が出たが、環境破壊の補償について具体的なことへ触れていないので、投資の呼びかけは難しいと関係者はみている。IBAMAの許可は片手落ちである。IBAMAによる許可の他に、裁判所の許可も必要となる。それから投資家の募集が始まる。
予定通り二〇一二年稼動として、同年にはアングラ三号も稼動する予定である。発電量は、両方合わせて七七〇〇メガワットとなる。これだけの電力が市場に供給されると、料金は値下がりが予想される。北部地方の地形は、一八万メガワットの発電能力があり、新たなアマゾン工業地帯が誕生することになりそうだ。