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中国より愛をこめて=伯にアドバイス=所得格差なくし教育に投資=外資に頼りすぎるな

2007年7月11日付け

 【ヴェージャ誌二〇一五号】中国でラテンアメリカ経済を研究するジアン・シーシュー教授は、ブラジル人は中国に対し不平を言うのを止め、競争を挑むのもお門違いだと忠告した。世界各国の経済発展には、大きく二つの行き方がある。ブラジルは中国と同じように所得格差の大きい国であるが、この格差を減らして資金を捻出し、教育に投資すれば、自ずと経済発展の型が出来上がる。これは中国が採った経済発展のモデルである。各国には国情と民族習慣に根ざした経済発展の型がある。
 次は同教授が見た、ブラジルの感想である。
 【中国にあってブラジルにないもの】中国の経済成長の秘訣は、国情に合ったシステムを取り入れたことにある。どの国にも民族の特徴があって、それに合った経済の標準を導入すべきである。中国は一九七八年、トン・シャオピン(鄧小平)主席の指導で共産党主導の市場開放が始まった。
 中国では社会主義市場の開放と呼び、ブラジルのそれとは大きく違った。中国市場は、ブラジル市場の規模を上回る一三億人の消費者を抱えた大市場である。中国は英才教育を行っているので、優秀な人材と勤勉な労働者には事欠かない。
 【ブラジル人の優秀性と勤勉性】優秀性と勤勉性は、ブラジル人との比較で論ずるべきものではない。ただ中国人の勤勉性は、儒教の厳しい影響を受けたものである。ブラジルと異なるのは、子弟の教育と貯蓄の精神だ。中国の経済発展には、毛沢東思想の薫陶も影響した。
 ブラジルでは消費は美徳とされ、外食やパーティ、ピクニック、ショッピング・センターの散策は、一般的習慣となっている。中国人も消費はするが、それは必要最低限である。不運の日のため中国人は常に蓄える習慣がある。
 【ブラジル社会と中国社会】ブラジルの経済政策は、ブラジルの現状に即した政策ではない。代表的な例は、重税と高金利政策が投資の妨げとなっている。ブラジル的というべきか、政治は不安定。これは軍政や革命思想を薦めているのではない。
 連邦政府と地方自治体は協力関係にないし、ライバル意識さえある。またブラジルは、富の分配が円滑でないため、所得格差という深刻な社会問題がある。所得格差は、富が偏在するため経済発展に支障を来たす。また犯罪と汚職が相乗進行するため、社会政策の障害になっている。
 【一般社会の協調】社会の協調は、中国でも政治スローガンになっている。共産党と独裁政権が長期にわたって支配した社会が、和を重んじた儒教精神に戻ることは簡単でない。これは経済発展より難しい。
 三億人がその日暮らしの極貧生活をしているのに、その中から一晩で富豪になる人が現れるのが中国社会だ。このような環境で和の社会は、一朝一夕にできない。それが実現するために経済と社会の両輪が同じ速度で回る必要がある。
 【中国の教育モデル】中国は英才教育方式を採り、優秀な人材を徹底的に育てるので、全員への機会均等はない。グローバル化時代は、科学の探求と技術革新を国策とし、人材育成に投資する。国費で留学させ、帰国後は必ず国威発揚に貢献させる。ブラジルは、人材の発掘と英才教育に力を入れていない。
 【ブラジルは未来の国?】ブラジルは、中国と同じように未来の国ではなく、現在の国である。ブラジルは潜在能力や天然資源、一人あたり所得で、中国より遥かに豊かである。それなのに何故、経済が停滞しているのか。それは外資に頼り過ぎるからだ。これまでブラジルで起きた経済危機は、すべて外資依存が原因である。
 【ものの見方の相違】通商交渉では考え方が一致するが、根底にある文化は異なる。価値観が異なる人たちと、いっしょに働くことは難しい。できることなら生活や仕事、結婚も価値観が同じ人と行動を共にしたほうが効果はある。
 【チリとブラジル】チリは途上国のモデル・ケースだが、同モデル導入には前提条件がある。政治と経済が、二人三脚になっていること。チリの構造改革はピノチェト時代から行なわれ、ブラジルより二十年先輩だ。外貨準備に努め、外資依存度が低い。フィリピンを除いた東南アジア各国で、チリ方式を導入した国は発展した。