ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 投資コストは世界3位=旧態依然の起業環境=生産部門は冬の時代=掛け声だけの経済成長

投資コストは世界3位=旧態依然の起業環境=生産部門は冬の時代=掛け声だけの経済成長

2007年7月17日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】産業開発研究所(IEDI)は十五日、国連の世界主要四七カ国における生産部門の投資コストで、ブラジルがタイとアイルランドに次いで第三番目に割高であることを明らかにした。投資コストは、工場建設や工作機械、設置調整などで投資決定の要因となるもの。投資家にとっては金融投資という選択肢もあり、工場建設や機械設置で資金を投下する意味があるかを問うものである。起業の投資コストは過去三五年間、チリが七%減アルゼンチンは五%減となったのに、ブラジルは三一%も増えている。
 ブラジルは、投資コストが世界で最も高い国の一つとなので新たな起業は困難とされる。生産業種が似ている中国や韓国と国際市場で競うのは、竹槍でB29に対抗するようなものだといわれる。国内では工作機械や工場建設費が年々値下がりしているが、高金利政策のため生産部門への投資意欲は低調であるとIEDIが発表した。
 アジア地域で過去三五年間の投資コストと比較すると、ブラジルは絶望的だ。韓国が四〇%減、マレーシアが二〇%減、シンガポールが一五%である。世界で最も投資コストが下がったのは、ハンガリーの四七%減であった。
 政府が経済成長率目標五%を達成できないのは、それ相応の投資がないためである。過去三年では固定資本もGDP(国内総生産)の一五・八%に達し、ソコソコの経済成長を遂げたが、経済成長率は一九四七年後の最低水準だ。
 生産部門への投資が低調なのは、国債の配当が有利であるのも原因の一つである。まとまった資金があれば、コモディテイ市場も魅力的だ。生産部門に投資するには、銀行へ一五%の金利を払い政府へ四〇%の税金を払う。さらに補助金に守られた輸入品と価格や品質で競わされる。
 ブラジルの投資コスト削減に手が打たれないなら、投資家は投資コストの安い国を選ぶ。為替の一ドルが一・八七レアルはよいが、工作機械を輸入すると税込みで二・五〇レアルになる。銀行融資は、返済期限が一〇年と短い。アジア諸国は二五年。しかも、輸入工作機械は免税だ。
 サンパウロ州工業連盟(FIESP)は、ブラジルの生産部門が冬の時代で、誰も投資する気にならないという。投資するのは、カーニバルとサッカーだけ。政府は生産部門といえば、エタノールとアグリビジネスしか頭にないと嘆く。
 問題は、割高な投資コストだけではない。中小企業にとって投資のための融資取り付けや営業認可の手続きが、必要以上に複雑で困難なのだ。場合によっては、故意に複雑化したり常識では考えられない無理を強いたり、営業活動の障害を設けている。
 BNDES(産業開発銀行)の融資は低利となっているが、それを仲介する市中銀行が暴利を貪っている。大企業は、市中銀行の融資など不要である。海外の国際金融から超低利の資金を調達する。必要なのは零細企業だが、投資コスト云々以前の状態にある。市中銀行は、銀行のための銀行であって零細企業のための銀行ではない。銀行窓口は無理難題を押し付け、門前払いも同様である。