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笠戸丸の錨を引き上げ=早ければ8、9月にも=「錨は〃根をはる〃シンボル」

2007年7月18日付け

 なんといってもクリチーバ百周年記念公園構想の目玉は、笠戸丸の錨、鐘、操舵輪の引き上げだ。
 笠戸丸の沈没地点は目撃者らの証言などから、ロシア領海のカムチャッカ半島南部のウトカ沿岸、北緯五三度〇〇分、東経一五六度〇九分辺りと言われる。
 伯日議員連盟の高山ヒデカズ会長によれば、五月十日付けの正式文書で駐ブラジル・ロシア大使に協力を要請し、一週間後には「全面的に協力する」との返事をもらったという。
 さらに高山連邦下議によれば、ブラジル海軍総司令官にも支援を依頼し、潜水夫を出すことを許可した。ペトロブラスなども協力を申し出ているという。ロシア領海の気候の問題から、流氷が流れ着く前、「八月から九月に引き上げるようにしたい」との考えている。
 関係者によれば「引き上げ時、ロシア政府は日本人の立ち会いを禁じる条件を出している」という。すでにTVグローボなどから引き上げ独占取材の申し込みも来ている。朝日新聞も六月二十日付けで引き上げの動きを報じるなど、日伯で話題になりつつある。
 笠戸丸の史実に詳しい宇佐美昇三さんは、ニッケイ新聞の取材に「錨の引揚げはカムチャッカの厳しい自然、短い夏、ロシア領という条件を考えると、相当の期間を必要とするのでは」と語った。同氏には『笠戸丸から見た日本―したたかに生きた船の物語』(海文堂出版、〇七年)という著作がある。
 それに関連して、同市の兵庫県ブラジル事務所の山下亮(まこと)所長は、宇佐美氏との連絡役となり、同書のブラジル移民関連部分(約四百頁分)を訳出したポ語書籍の出版を来年一月ごろに刊行する計画だ。
 同時に百周年記念公園に設置する予定の一メートル半もある精巧な笠戸丸模型の製作なども進めている。
 同州は兵庫県に縁が深いことから、山下所長は「もう一つの錨を神戸の旧移民収容所に設置したらどうか」との意見を持っている。
 このプロジェクトは早川勝ルイス氏(元同市都市計画局長)によって一月に原型が作られた。笠戸丸の錨を引き上げるアイデアも同氏のもの。「なんと言っても実物だ」と錨の意義を強調する。
 「笠戸丸はペルーやメキシコ移民も運んでいる。ブラジル日系人だけでなく、広く日系全体に意味がある」。さらに「錨には〃根を張る〃ことのシンボル。現地社会とのつながりを象徴するにふさわしい」と語った。