2007年7月20日付け
ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)は七月定例昼食会を十三日、ホテル・シーザー・ビジネスで開催した。バイオエネルギー生産者連合(UDOP)のジョゼ・カルロス・トレード会長を招き、講演会「サンパウロ州西部におけるバイオエネルギー部門成長の見通し」が行われ、二〇一〇年に向けての増産の見込みや、新たなバイオエネルギー技術センターの建設計画などが紹介された。トレード氏は「バイオエネルギーはガソリンと競合するのではなく、補完的は存在」と、これからの成長に確信を見せた。
バイオエネルギー成長の追い風をなっているのは、原油価格の高騰や、熱帯林乱伐、海水面の上昇などに代表される環境問題。すでに、ブラジル、アメリカ、スイス、タイなどの十二カ国が使用しており、アルゼンチン、キューバ、イギリス、フランスなど十一カ国が研究、導入を検討している。
トレード氏は、「エタノールにしても、砂糖にしても新たな農耕機械を取り入れ、実りのある拡張を目指している」と言う。「さとうきび(カンナ)の中心的生産地であるブラジル中南部で、百七の拠点を増設し、生産量も倍近くを確保する」「現在、全ブラジル面積に占めるさとうきび畑の割合は〇・七%だが、二〇一〇年には一・二一%まで引き上げる」と説明。
その拡張の大部分はサンパウロ西部で行われ、同地域の農牧地で、さとうきび栽培地の割合を一五%から三一%にまで拡大する。二〇一二年には、一千万ヘクタールの土地で、年七百二十八万トンのさとうきびを栽培し、バイオエネルギーとしては二万四千メガワット分を得る。四百二十億レアルがサンパウロ西部に投資され、年九十億の税収が見込まれる、という展望を話した。
「最大の問題は人材です」とトレード氏。これから計画を進めるにあたり、コストを下げるための、河川を利用した低価格輸送、アラサツーバ―パウリニア間のパイプライン整備、道路運輸の改良に加え、人材、技術普及、研究を進めるためのバイオエネルギー技術センターの構想を紹介した。
十九の優良企業と協力し、ホテルや講堂、研究所などを備え、住宅や福祉施設、初等教育機関などを備えたセンター。将来的には、アメリカやドイツと共同でバイオエネルギー大学を創設したいと構想を明かし、さらに「エタノールの国際価格安定に重要な役割を担ってくるインドなどアジアからの参加も望ましい」とした。
昼食会では、会場から「エタノールが今後及ぼす影響はどうか」との質問がなされ、トレード氏は「生産地の拡大は荒廃している放牧地を中心に進めている。農業や畜産の技術も向上し、六%の牧草地が減っても生産量が一八%伸びた実績がある」と、エタノール増産による土地の高騰を否定していた。