2007年7月25日付け
【ヴェージャ誌二〇一七号】ヘンリー・ポールソン米財務長官は、ウォール・ストリートの大手ゴールドマン・サックス投資銀行頭取を辞してブッシュ政権へ入閣した。同長官は十日、ブラジルを公式訪問してルーラ大統領らと会い、ブラジル発展の鍵は社会格差の是正であると強調した。富の偏在是正が円滑な富の流通につながり、多くの人にチャンスを与えるという。次に教育と医療への投資。汚職は昔からお役所仕事の副産物であった。制度や規制が複雑になるほど、汚職のチャンスができる。
次は同長官との記者会見の内容である。
【ブラジルが国際経済の波に乗るには】世界には、カネがあり余っている。そのカネで所得格差を解消する。次に教育と医療へ投資する。それから資本市場へ参入。ブラジルを旅して思うことは、インフラ構造が貧弱なことだ。
問題は、政府に外資を導入するだけの信用度が欠けているのだ。発展のプロジェクトを実現するため、米国は技術指導の用意がある。例え下層階級が多くても、順調に経済成長を遂げ、財政基盤の強化に力を注いでいる国は有望。
【インフラと生産部門投資への助言】投資家は、有望な投資先を探している。但し、投資に対する安全保障が前提条件である。民間企業では、投資の妥当性が確認されたときしか、投資しないものである。
例えば、公共工事で身分不相応な大工事を見かける。プロジェクトは、ズサンで机上に長い間留まる。中々日の目を見ない。時間はやたらに過ぎる。それはプロジェクトが透明性に欠けるからだ。
【汚職は投資の妨げか】汚職は経済の重大な障害物であり社会を毒するものだが、世界中どこの国にもある。汚職は、お役所仕事の当然の結果として生まれる社会悪である。規制や制度を作れば作るほど汚職の道が開かれる。不正資金は海外へ持ち出さなければ、国内でグルグル回る。
汚職の退治は、制度の簡略化や規制緩和しかない。悪徳公務員は制度を故意に複雑化し、リベートを稼ぐ。官庁を三七省庁に増やしたのは、組織の肥大化で汚職の繁殖を意図的に増殖したのだ。政府は生産性と効率化を至上命令とする民間企業に学ぶべきだ。特に複雑な税制と労働法がブラジル発展のガンだ。
【BRICSの中のブラジル】BRICSの各国は、国内事情が非常に異なるので比較は無意味である。しかし、ブラジルはインフラの総合性や地域社会のまとめ役として壮大な複合性を見せた。ブラジルは民主政治では成功した国の一つであり、資本は自由化され、レアル通貨は無限の可能性を秘めている。
反面ブラジルは、アマゾンやパンタナルで自然の有効性を生かしていない。BRICS各国は、グローバル経済の中で持ち味を生かしている。ブラジルも、その一員として国際金融からより多くの資金を引き出し、国際通商関係をもっと拡大するべきだ。
現在の世界経済情勢は、途上国経済を大きく引き上げ経済基盤を強固にしたことで、未だかつて見たことがない。金融市場の流通量も豊富である。恐慌らしきものは一九九八年以後、見当たらない。しかし、いつまで続くかは分からないし、余り長続きもしない。
グローバルな経済危機はいつか起こる。いつの時代でも、どこかで綱が切れる。双子の赤字を抱える国か、国内総生産(GDP)の二倍の国債を発行する国か分からない。しかし、ブラジルは現在の経済政策を続けるかぎり、その危機を克服できる。もしも世界恐慌が起きても、ブラジルに波が押し寄せるころには小さくなっている。
【ドーハ・ラウンドの打開】各国には農業生産者を見殺しにできない国内事情があり、国家安全保障の問題を乗り越えるには時間がかかる。しかし、主要国代表が解決策で知恵を絞っており、現在の膠着状態は各国の譲歩で打開に至ると信じている。