2007年7月27日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】ジョビン新国防相は二十五日、就任の辞で航空行政における指揮系統の欠如を指摘した。同相は前政権で法相、現政権では最高裁長官を歴任。今回は航空トラブルの解決に向けて、ルーラ大統領から白紙委任状を受け取った。同相が糾弾したのは、重要な役目を課されながら機能しない民間航空庁(Anac)である。同庁幹部が無能でも権限と任期が保障されるのは、法的欠陥だという。政府は航空行政の改革に際し、機能しないAnacの幹部を解任または更迭できる法改正を検討すべきであると、同相が提言した。
航空トラブルが浮上して十カ月目、ようやく本格的な行政介入が始まることになりそうだ。二回にわたる航空大惨事という代価を払っての決断である。記者会見に臨んだ新国防相は、まずAnac幹部の更迭から始めると述べた。
前官房長官や現官房長官など政府幹部のコネで要職に就任し、役にも立たない人材をタダメシで養う非合理的なAnacは、上院が設立したものである。Anacは技術者だけ残し、穀潰しは一掃するべきだという。また構造改革は超党派でと強調した。
同相は二十六日、現在の国防行政の機構を各部門毎つぶさに検討する。二十七日は、空港整備公団(Infraero)の人事異動を発表する。同相が改革はトラブルの解消だけというが、サイトウ空軍総司令官の立場に抵触するか否かが、注目されている。
同相は航空分野で技術的に素人であるが、問題の核心は指揮系統と執行系統であると断言した。航空行政を機能させるために、パイロット経験は不要である。新聞社の社長は、新聞記者でなくてもいい。医療でズブの素人が偉大な保健相となった例がある。
文人の新国防相就任について、陸軍内には抵抗がないようだ。国防相の使命が陸軍の指揮系統とは根本的に異なるかららしい。大統領の特別要請なら、これまでになかった特権を新法相が授かったと推察できる。決定打のなかった航空トラブルに、終止符を打つと関係省庁が期待している。
ルーラ大統領は怖いもの知らずだが、飛行機だけは怖いといった。ジョビン国防相は、国内ですることがなく細君の厄介者となっていたので、難役を引き受けてもらったという。ブラジルに死刑はないが、航空事故を死刑代わりにしてはいけない。もしも新国防相が法律屋ならば、ブラジルの構造的欠陥を直し安心できる国にするという。
新国防相は最高給を貰っているので、昇給する必要がなく安い買い物であった。ピーレス前国防相は、政治史に見る稀な逸材であった。選手交代の話を聞かされてから獄門で首を跳ねられる囚人のように毎日、熱油の中でテンプラに揚げられる気分であったと大統領は場を和らげた。
ルーラ大統領は、第一政権で要職を労働者党(PT)のメンバーへ政権獲得のご褒美としてバラまいたことを反省している。第一次政権で起用した縁故採用のツケが、第二次政権で膿となって噴き出したらしい。大統領は前政権が試みPTが反対した労働法(CLT)による公務員の採用やブラジルの奇跡を実現したメジシ政権の経済政策導入を検討中だ。