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TAM機事故=「九死に一生を得る」=物流ビル職員決死の脱出

2007年7月28日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】十七日に発生したブラジル航空史上最大の事故となった、サンパウロ市コンゴ―ニャス空港でのTAM航空機エアバスA320の炎上で二〇〇人近い犠牲者が出たが、TAM物流ビルの地上にいた複数の人も犠牲となった。
 二十四歳の女性管理職は炎上するビルから飛び降りて死亡、五十歳の男性は同僚の救出を手伝ったために重度の火傷と有毒ガスによる呼吸困難で死亡した。両者とも年内に結婚する予定だった。まさに降って湧いた事故で、一瞬のうちに人生の夢を打ち砕く惨事だった。
 TAM航空によるとA320が突っ込んで炎上したTAM物流ビルから十九人が病院に収容され、十人が無事に退院したものの、七人が重体で予断を許さないとのこと。さらに十九日の時点で八人が行方不明となっている。
 そうした中で充満する煙とガスに耐え切れず一度は三階から飛び降りる決意をした男性が階下からの「飛び降りるな、落ち着け、必ず救出する」との声に励まされて思い直し、直後に救出されるというドラマが展開された。以下はその男性の恐怖の体験談である。
 情報技術課のシウヴァさん(33)は通常の勤務時間は八時から十七時半だが、当日は会議のため居残った。十八時五〇分ごろ轟音とともに停電となった。同時にキナ臭い匂いがして三階の会議室に煙が充満した。
 キナ臭い匂いは、ちょうどシュラスコをする時、炭に予めアルコールをまいた時に発する匂いに似ていたという。社員らは「火事だ」とエレベーターに殺到したが作動しておらず、階段も破壊されて三階は孤立した。
 煙に混じり有毒ガスのいやな匂いが室内に充満したため、社員らは暗闇の中で手探りで右往左往、助けを求める声が耳を突いた。シウヴァさんは一人の同僚とともに窓ガラスのある部屋をこじ開けて、椅子でガラスを叩き割った。新鮮な空気が入りこみ命を洗われたという。他の社員らにもどなったが、パニックに陥って誰も聞こうとしなかった。
 しかし火の手が回ってきたことでシウヴァさんは窓から飛び降りることを決心、それを同僚が必死に止めた。空気を吸い込むため窓から身を乗り出すようにした二人を見て地上の消防隊員らが飛び降りると思い、「落ち着け」と絶叫した。
 上から見ていたシウヴァさんは飛び降りるのを思いとどまったものの、ハシゴ車に問題が生じ救助活動が中断したのを見て、絶望に襲われた。しかしその数分後、ハシゴが到達、シウヴァさんと同僚は救出された、救急車に乗せられるまでの間、シウヴァさんは消防隊員に感謝の言葉を言い続けた。