2007年8月1日付け
〃最高齢での移住者〃か、75歳で西井さん=息子のいるクリチーバへ=再婚し、生活拠点移った=「肉好きだから、合ってる」
「肉類が好きだからブラジルが合ってるんですね」と豪快に笑うのは、パラナ州クリチーバ在住の西井良雄さん(89、大阪府港区出身)だ。十五年前、なんと七十五歳でブラジルへ移住した。「おそらく最高齢での移住では」といわれる。
なぜ七十五歳で渡伯したかといえば、息子の恵一郎さん(59)が駐在員として一九七五年に同地に渡り、勤務した進出企業が撤退したあとも残り、八二年に友人三人と建設会社EMADLを起こして住んでいたから。恵一郎さんは「自分でやるには、こっちの方が面白いと思ったから残った」という。
大阪市大の土木建築を卒業している恵一郎さんは、木造建築へのこだわりが強い。同州都の日本庭園にある金閣寺、環境大学、兵庫姫路会館、サンパウロ市でも東洋人街にある仏心寺の屋根などの、独特の日本風木造建築の施工にも関わっている。
良雄さんは「まさか自分がブラジルに住むようになるとは」と自らの劇的な人生の展開を振り返る。日本では電話関係設備取り付け会社に勤務していたが定年。妻を亡くし、娘が嫁いだ。そんなとき、息子がブラジルから「こっちにくればどうだ」と誘った。
良雄さんは「思い切って」と海を越えた。「もっと暑いところだと思っていたんですがね」と、真冬のクリチーバの気候をいぶかる。「どうも寒いところは苦手で」と苦笑い。
恵一郎さんも「(父がブラジルに来てうまくいくか)僕も心配してた。でも〃住めば天国〃」と安心している。実際、良雄さんは同地で再婚し、二人で生活している。生活の拠点は完全に移った。日本に帰ったのは三回だけだという。
ポ語には苦労しているが、「おかげさまで友だちもできた」と日系社会の存在に感謝する。渡伯五年目ぐらいから文協の仕事も手伝うようになり、評議員にも就任。八十歳ぐらいから健康のためにゴルフも始めた。昨年十月には、米寿を記念してゴルフコンペを行い、百五十人も集まった。
百六十人もの会員がいるクリチーバ壮寿会の会長も務める。二カ月に一度行われる昼食会には、毎回八十人も集まるという。
良雄さんはいう。「NHK見てても、ブラジルで紹介されるのはアマゾン、インディオばかり。サンパウロとかクリチーバのような大都市があることすら、一般の日本の方は知らないんじゃないでしょうかね」。米寿を超えて、ますます意気軒昂のようだ。