2007年8月3日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】航空事故解明を担当するケルスウ空軍少将は一日、下院で行ったTAM航空機のブラック・ボックス点検は、人為ミスか欠陥機か結論を出すのに不十分であると述べた。スロットル・レバーが誤った位置にあったことは、中枢系統を自動コントロールするコンピューターの誤作動で減速装置をブロックし、パイロットが修正できなかった可能性があるという。コンピューターが着陸不可と判断し離陸態勢へ自動的に切り替えた可能性があるため、パイロットの緊急措置は消去されたらしい。
人間が創作したコンピューターであるが、コンピューターの判断が人間の判断と異なる場合、コンピューター指示に従い取り返しのつかない事故に至ったら誰の責任になるのか。スロットル・レバーが誤位置にあったことで、コンピューター・ミスか人為ミスかが問われている。
機体は、コンピューターの自動制御で人為操作をさせなかった可能性がある。コンピューターの完全自動制御装置は、人間の英知を結集した最高のシステムだそうだが、全員を死へ追いやってしまったことで妙な展開となった。
同少将はブラック・ボックスのグラフを解読し、コンピューター制御を説明した。機体の着地時にスロットル・レバーは左右が別作動し、左はアイドルへ入って停止態勢を取り、逆噴射を行った。右は加速し、離陸態勢へ入った。これは人為を超えたコンピューターの行動とされる。
機体は着陸滑走路から急カーブし、離陸滑走路へ入り飛行態勢を取ろうとしたことが想定される。機体はその時、滑走路の最終限界地点を超え、ワシントン・ルイス大通りへ片足を入れていた。パイロットの急旋回と叫ぶ声が、その時録音された。だが機体は旋回できず、物流センターへ突っ込んだ。肉眼で現場を見ているパイロットと、システムを装填されたコンピューターの相違である。
ブラジルの航空機操縦ランクは、スペインやアルゼンチン並みから今回の事故でゼロに落されそうだ。ブラック・ボックスの公開と原因解明の報道は、国連規定で禁じている。報道が許されるのは、パイロットによる機体爆破など特例の場合に限るが、罰則はない。
ブラック・ボックスの公開は上院でも行う。報道禁止の国際法を知っているケルスウ少将は事情を説明したが、下議が解明圧力をかけ、聞く耳を持たない呈であった。また同少将は裁判所から期限付きで、ブラック・ボックスに関する結論を要求されていた。
ブラック・ボックスの録音は、ソフトがないと肉声で聞くことはできない。米国から送付された報告書は、英語を解さない下議が多いため、同少将の通訳で説明した。下議らは、専門用語が多いので議員をET扱いするかと抗議した。
ブラック・ボックスの内容報道は、技術情報の漏洩につながる。これからコンピューターの自動制御装置が、公開される。人間とシステムの関係や人間の判断が、どこまで制限されるかが解明される。A三二〇型旅客機がフランスで開発された一九八七年、世界最先端の自動制御システムと定評があった。