2007年8月10日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙九日】留任に固執するカリェイロス上院議長(ブラジル民主運動党=PMDB)の意向をよそに、大統領府は失脚を想定して八日、後任人事へ動き始めた。現在有力視されているのは、ジェルソン・カマタ上議(PMDB)である。いっぽう野党は、政府の政策に批判的なジャルバス・ヴァスコンセーロス上議(PMDB)を推している。カリェイロス包囲網の集中砲火を受ける上院議長は、強気の姿勢を崩さず、銀行口座と資産明細の開示が身の潔白を証明する良い機会であると述べた。
同議長は、野党が布告した議事妨害圧力などに屈しないと強調した。「私には、神以外に畏れるものがない」と豪語。議長支持の意向を表明するルーラ大統領は、歴訪先のニカラグアから同議長へ、最高裁と上院倫理委員会の判断を待つと電話をしてきた。
ブラジル国民一億九〇〇〇万人は、告発が立件されなければ潔白だと大統領はいう。大統領は法案の審議を早めるため、同件の早期決着を願っている。また、同議長が他人名義で買収したラジオ放送局の営業許可更新を下院が承認した。
しかし大統領府は、同議長を取り巻く情勢が野党へ有利に展開しているので、連立与党の亀裂を危惧している。同議長の失脚を想定し、同件で中立を保つ後任候補の人選が始まった。同議長の政治的弱体化は、日増しに見えている。
党内では後任人事が現議長の追い落としにならないよう配慮している。同議長は上院の議事進行を通常通り行い、何ら支障は起きていないと大統領へ報告した。懸案の零細企業のスーパー単一税も七日に承認され、税制改革は順調に進んでいると太鼓判を押した。だが、同議長が抵抗するほど大統領の意向に反し、決着は長引きそうだ。
いっぽう野党のブラジル民主社会党(PSDB)と民主党(DEM)が、同じ連立与党のヴァスコンセーロス上議を後任議長に推す工作を進めていることを大統領府が心配している。野党は同候補なら、PMDBのみならず民主労働党(PDT)やブラジル社会党(PSB)の票も取り込めると踏んでいる。
ヴァスコンセーロス上議を上院議長に据えると、PMDBの多数派が同上議を中心に結集するため、連立与党を分裂させて新しい勢力を構成できると野党はみている。同上議は名目上連立与党であるが、独自の政治色を保っていた。
上院議長が名指しで非難したエレーナ元上議(自由社会党=PSOL)は、上院本会議におけるぶ告の犠牲という議長の抗弁が、低劣なあがきで常軌を逸していると反論した。同議長がアラゴアス州で犯した数々の違法蓄財や不法取引を糾弾するのに、ぶ告の必要はないという。
上院の良識とされるペレス上議(PDT)が、議会は病んでいるという。政治家は政治にもっと熱意が欲しい。同上議は現議長を支持するが、議長が潔白ならば潔く辞任すべきであると述べた。留任に固執すると、何かやましいことがあると思われる。議長支持の牙城であった連立与党から日に日に支持者が去るのは何を意味するのかと同上議は憂慮している。