2007年8月16日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】米不動産ローンの焦げ付きに始まった金融不安でサンパウロ市証券取引所は十四日、株価指数を二・九%下げ、ドル通貨は二・一六%上げ二レアルすれすれへと戻した。中央銀行は二〇〇六年九月以来行ってきたドル通貨の競売を中止した。米経済にリセッションの陰りが見え始めた。小康と思われた金融市場が十四日、再び音を立ててきしみ始めた不安材料は、世界最大のスーパー、ウオール・マートの減益発表。米国最古の共済ファンド、センチネル・マネジメントの取り付け騒ぎで、米当局に助けを求めたことなど。
米経済の落ち込みでドル通貨が高騰する不可思議な現象が起きている。米国発の金融不安は、国際金融市場を総なめにし、不況の足音が聞こえてきた。サンパウロ市証券取引所が受けた衝撃は二〇〇六年九月以後、最大級のものであった。
メイレーレス中銀総裁は、ブラジルの金融市場は安泰というが、為替市場の動向と予測についてコメントを避けた。ブラジルは、いつか来た道を戻り始めたらしい。金融不安の波がブラジルに押し寄せてわずか十八日間でドル高の峰を登り始めたようだ。
経済評論家のミング氏は次のようにみている。米国発金融不安が始まった七月二十三日から昨十四日までに、ドル通貨は七・八%上げた。中銀がドル介入を中止した昨十四日まで、ドルを買い続けたのは良かった。ブラジルの外貨準備高は五五億ドルも労せず儲かった。
秋の天気のように変わる外的要因によって、為替政策を変更する必要はなかったようだ。ブラジルの金利政策に批判的であった人たちも、今回の変動で矛を納めたようだ。
投機家が金利差で稼ぐためにドル通貨が下落するといった。投機家は海外で低利のドルを借りて、ブラジルの高金利に投機した。その金利差で投機家はホクホク顔だった。投機家が持って来たこのドル通貨が、ブラジルの為替市場をかく乱したという。
ブラジルの基本金利は、従前通り引き下げるらしい。金利差は益々縮小する。ドルは上がり始めた。為替政策や金利政策をとやかくいっていたが、なるようにしかならないらしい。ブラジルは相変わらず貿易黒字も直接投資も順調なため、経済は平穏であり続けると思われる。
ブラジル経済がこの調子で行くなら今後、金利よりもドルのほうに下げ圧力がかかりそうだ。国際金融市場から資金を引き揚げて流通量が減る間、ドルは上がる。ドルとブラジル経済の関係は八卦のようなもの。今回の金融不安がいつまで世界経済を揺さぶるかは、誰にも分からない。
また、中銀が金融不安にどう対処すべきかも予測できない。いつまでドル通貨の購入を中止するか、再開するかも分からない。中銀総裁の判断が正しかったか、全ては塞翁が馬なのかも分からない。
これまでのドル介入は、荒れる市場を鎮めるための手段であった。その結果として外貨準備高が貯まり、予期しない儲けが転がり込んできた。しばらく様子を見ないと分からないが、これからはドルの高騰が治まり、為替連動のリスクとインフレも沈静化すると思われる。