2007年8月17日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】サンパウロ市証券取引所の株価指数が五日間続落したため、ルーラ大統領は十五日、金融不安は米経済と米銀行の問題であり、ブラジルは外貨準備高一六〇〇億ドルという大船に乗っているから心配無用と動揺の沈静化に努めた。しかし、ドル通貨は十五日、二・〇三一レアルに付け、二〇〇七年の株価指数の上昇率は一〇・八二%と、上げ幅が縮小した。世界経済は調整期に入ったが、中国は金融不安をバネに発展するという。ブラジルの経済成長率は、目標の四・六%を超えるチャンスと国際金融筋はみている。
マンテガ財務相は、旧約聖書の痩せ牛のたとえを引用した。肥え牛の時代に一六〇〇億ドルの脂肪を貯めて置いたので、痩せ牛の時代が来ても飢えることはないという。国際通貨基金(IMF)は今回の金融不安を恐慌ではないと否定したが、不気味だ。
米経済双子の赤字で調整期はいつか来ると予測されていたが、果たしてそうなのか予断を許さない。十五日の金融市場は、流通量引き上げで弱気のうえ、投資ファンドが赤字の穴埋めと顧客の決済に応じるため手持ち株を放出。これが暴落に拍車をかけた。
世界は変革の時代と、ゴールドマン・サックス投資銀行がいう。金融不安で、後退する国と前進する国がある。金融不安の真っ只中、中国の消費は七月だけで一六・四%増。続いてブラジルが累計で二〇%、ロシアが一五%、インドが九%。この活力が世界経済をけん引すると、同投資銀行はみている。
中銀からパーチュアル銀行へ転じたロヨ氏は、ブラジルが経済成長率を目標の四・六%以上を上げるチャンスだという。ブラジルはこれまでと違い、強固な国内需要がある。米国経済に頼っていたグローバル市場やコモディテイ市場は、打撃を受ける。
国内需要を持つブラジルは幸運である。外貨準備高が、為替と債務、信用不安の悪循環を断ち切り、安定経済の基礎をつくった。経済発展より内容充実を心がけたら、金融不安は克服できると同氏はいう。
ハーバード大学のロゴフ教授は、為替が最終的に一レアルになる可能性が高いという。ブラジルの活力は南米ではチリに並び最高、経済の構造改革を行なえば経済成長は加速する。現在の金融不安は、ボヤのようなもの。金融不安の元凶は不動産ローンではなく、米国の低生産性と人件費高である。米経済は世界経済にとって頭痛の種に変わりはないと述べた。
今は、ひたすら嵐が通り過ぎるのを待つばかり。一夜明けてみたら、途上国はどこも健在で、先進国だけが病んでいる。何か歌の文句のようだ。貧乏人は他人のカネを借りてまで金儲けができない。それができるのは金持ちだけ。
嵐の間は、途上国の経済基盤が弱いので、同じ強風でも被害が大きいように見える。台風一過の後は、ブラジルや中国が案外安泰である。Brics(ブラジル、ロシア、インド、中国)がヘッジ・ファンドなどに手を出さなかったので、流通量の引き上げ対象の外にある。その堅実性が見直されそうだ。