2007年8月18日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十七日】金融情報企業エコノマチカは十六日、金融不安がバブル崩壊の様相を呈し、サンパウロ市証券取引所の株価下落は地滑りが始まった七月十九日から昨十六日までで、総額二七三六億ドルに上ると発表した。米国は同時期、一兆六一二〇億ドルの下落となった。銀行など株式を上場する金融業二六社だけで損失の二二・三%を占め、その額は一カ月で六〇九億ドルに上る。サンパウロ市証券取引所は十六日、一時株価指数が八・八二%まで暴落した。しかし、終値は二・五八%で引いた。ドルは、二・〇九二レアルへ付けた。
大統領や財務相の楽観宣言とは裏腹に、金融不安の影響が国内経済に見え始めた。海外と取引がある零細小企業は、ドル通貨の動向に著しく左右される。為替に五%の変動があると、一般企業でも動揺する。まだ大企業での動きはないが、中小企業は発注量を減らしている。
輸入業者はドル通貨の一二・〇五%上昇で、輸入原価が高騰。輸入資材に頼るメーカーは、地場産業との競争力で不利となった。どこも資材輸入契約を延期し、為替が落ち着くのを待っている。また為替の乱高下に対し、各社はヘッジ(つなぎ取引)を行った。
ドル通貨の高騰で喜ぶはずの輸出業者は、コモディテイ価格の下落と需要の低下、世界経済の減速で課題を抱えた。しかし、輸出業者はドルの上昇を一時的現象であると判断し、出荷を急いでいる。またコモディテイ価格の下落は、ドルの上昇でカバーできるという見通しである。
金融パニックの影響をまともに受けそうな業界に、旅行社がある。しかし、打撃は誰も口に出さないし、早期回復とみているようだ。影響の有無は十五日から二十日後に明白になる。金融不安が始まった当初、誰もが一時的現象と思った。同業界は一ドル二・三〇レアルまでが妥当とみている。先行きを心配するのは軽率だという。
金融市場で株式投資を行う人は、手持ち資金の二〇%を資本市場で動かし、残りを確定利付きファンドかポウパンサ(貯蓄投資)などのDI(銀行間取引)に預けるのが無難だと投資顧問が忠告する。
金融市場は過去五年間順調であった。現在は五年で貯まったぜい肉を落す時期。これまでの損失を諦めて金融投資から身を引くなら、今がチャンスである。損失を取り戻そうと再挑戦をするなら、さらに泥沼へ足を踏み入れる危険性が高い。初心者なら買い時だが、最小限にすること。
今度の金融不安でカメラ・レンタ(高速度撮影)という新語が生まれた。世界経済という名の戦艦がジワジワ沈むという意味らしい。世界恐慌の噂はあったが、前回とは規模が遥かに異なり世界情勢も違う中で、何が起きるか誰も想像できないでいる。
不動産ローンの焦げ付きで、世界経済が傾くとは思えない。クレジット環境という経済構造に問題があるようだ。莫大な流通量が金融市場に出回り、虚の経済が実の経済を駆逐しつつあった。米国を舞台に演じられた最後の晩さんは、お開きの時間を迎えたらしい。