2007年8月22日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日】ルーラ大統領と七閣僚で構成される政策諮問会議は二十日、米金融危機がもたらすレアル通貨の下落によるインフレ再燃を懸念していることを明らかにした。アナリストの分析によれば、インフレ圧力は基本金利の引き下げに歯止めをかける可能性を示唆している。二十日の世界株式市場は大幅に揺れた末、辛うじて現状維持を保った。しかし、ドル通貨はジワジワ上げ、先物金利も引き上げ傾向へ入った。これでブラジル中央銀行は、基本金利の引き下げサイクルを終了するものと思われる。
好調と思われていたブラジル経済は、歴史の節目を迎えることになりそうだ。ボディ・ブローのようにきいてくるレアル通貨の下落は、やがてインフレ懸念につながる可能性が見えてきた。政府にとって唯一つの悲観材料である。
頼りの綱は、国内市場と一六〇〇億ドルの外貨準備高、輸出品目の多様化である。政府はこの三つを武器に、世界経済の低迷時代を乗り切る考えのようだ。ブラジルの輸出は近年、米偏重からEUや中南米、東南アジアへシフトしたのが正解だったらしい。
レアル相場は二十日、一ドルが二・〇二九レアルにつけ、まだ国内市場に反映はしていないが警戒水域にある。専門家の予測では、これからレアル相場は見える落ち込みがあって、しばらくの間横ばいになる。
政府懸念の背後には、中銀が基本金利の引き下げ継続を決定したばかりの時点で、朝礼暮改的な通貨政策がある。通貨政策委員会は九月四日に開催される。それまでに判断材料が山のように積まれる。現在の基本金利一一・五%の行方が注目される。政策諮問会議と中銀は意見が別れている。
今回の金融危機の性質を見ると、銀行の経営法が変わったといえる。以前は銀行が抵当や担保、約手、契約書などを保障物件として融資をした。返済期限がきたら、利子と手数料を徴収して決済をした。しかし、これでは抱き合い心中になると危険を感じた。
不況がやってくると債務者は、決済が遅れたり、期限前に倒産する可能性がある。これでは銀行が元も子もない。八〇年代には、国家レベルの倒産が相次いだ。その防衛措置として、投資ファンドによる危険分散方式を取り入れた。
これは、日本の神代時代にあった金融システムだそうだ。貸したカネは投資ファンドで預かり、また銀行へ返してもらう。債務者は、投資ファンドの窓口で必要に応じて出し入れをする。債務者は焙烙の上で踊る猫であって、全ては銀行が管理をする。
問題は、銀行管理もリスク管理もない不動産ローンのような三流金融機関だ。これら金融機関は誰の支配も受けない野武士で、その数は無数にある。
仮に最愛の娘を担保にカネを借りたとする。娘は野武士AからBに弄ばれ、さらにCDEFへと引き回される。カネを工面したから娘を引き取るといっても、どこにいるか分からない。どこかの古井戸に娘たちの屍が山ほど捨てられている。怨霊の祟りはいつかあるに違いない。