2007年8月22日付け
どうして(日本政府は)二重国籍を認めないのか――。去る七月十九日に行われた第四十八回海外日系人大会・第十四回パン・アメリカン日系人大会合同大会の分科会「海外日系人の日本国籍留保」の報告書がこのほど、在サンパウロ総領事館内日系社会班に届けられた。南山大学総合政策学部の浅香幸枝准教授を迎えて、午前、午後と活発な意見交換が行われた同分科会。日本でデカセギ子弟の〃無国籍問題〃が出つつある現在、日本国籍をどう考えていけばいいのか。分科会の参加者らはそれぞれの思いを述べて、今後も問題解決に協力していくことを約した。
参加者は浅香さんのほか、パラグアイからはアスンシオン大学教授の金沢フェリックスさんが、アメリカからはボランティア活動に取り組んでいるという中川四郎さん夫妻が参加した。ブラジルからは、近藤四郎ブラジル農業拓殖協同組合中央会会長、林アンドレさん(弁護士)ら四人が加わった。
午前中は資料「チッペルレ版わかりやすい国籍法二重国籍解説」(http://www.gcnet.at/campaign/ciperle-cl.htm)を用い、二重国籍についての各自の考えを発表。浅香さんは「日本の国力を考えるとき、二重国籍は有ったほうがいい」、中川さんは「現在多くの若い日系人が(アメリカに)在住しているが、国籍選択を強要すると、若者の日本離れが起こる可能性がある」と話した。
主婦の綾部カヤコさんは、「親は二重国籍なのに、子はなぜブラジルの国籍しかもらえないのか」と自身の疑問を投げかけた。
現在、血統主義をとる日本は、出生地主義をとる他国との間での重国籍をまったく認めていない。そのため、日本国籍喪失届けを行わず戸籍が残っていたとしても、他国に帰化したり、国籍を選択したりした場合には日本国籍を失うことになる。だが、一方で、自動的に外国国籍を取得して重国籍になった人は、そのまま重国籍でいることができているのが現状だ。
林さんは「イタリアでは曾孫の代までイタリア国籍の取得を認めている」ことを紹介した。
午後からは午前の発表を踏まえての議論を展開。近藤さんは「二重国籍を認めることは、少子化の進む中で国民を増やすことにつながる」とし、「なぜ移住一世がブラジルに帰化しなければいけなかったのか。昔の事情を考慮して、元日本人と証明できれば日本の国籍(への復籍)を許可してほしい」と訴えた。
討論では、「遠方のためあるいは経済的な理由などから、出生時に日本政府に届け出が出来なかった子弟にも再登録のチャンスがほしい」、「日本の労働市場で貢献している日系人に国籍取得を可能にしてほしい」といった意見が聞かれた。
「日本ではデカセギ日系人に対して、恐怖を感じるのが現状。日系人への信頼を築き日本人の理解者を増やすためにも、デカセギが(日本に)来てよかったという事例を増やすことが、二重国籍が容認される基本となる」との見解もあった。
分科会は、今後も各者が連携して取り組んでいくことが確認されて終わった。