2007年8月23日付け
【静岡新聞】麻生太郎外相は二十一日夜、ブラジルのアモリン外相とブラジリア市内の外務省で会談し、両国間の犯罪人引き渡しなどを協議するため、司法問題に関する作業部会を新設することで合意した。ことし秋にも東京で初会合を開く見通しだ。
浜松市のレストラン店主強殺事件など、日本で犯罪に関与したブラジル人が国外逃亡するケースが増えている現状を踏まえた措置。刑事、民事の司法共助や受刑者移送、相手国政府の要請を受けた「代理処罰」の在り方などを外務、法務両省の実務者レベルで話し合う。
麻生氏は、ブラジルの裁判所が、日本政府の要請を受けた「代理処罰」の形でブラジル人容疑者を起訴した二つの事件について「迅速な対応を感謝する」と表明した上で司法部会の設置を提案。アモリン氏も応じた。
外務省によると、在日ブラジル人は現在三十一万人以上いるとされる。日本とブラジル間には両国間の社会保障問題などを協議する作業部会が既に設置されており、二〇〇五年九月にブラジルで初会合が開かれている。
両氏は、国連安全保障理事会の改革に向けた緊密な連携を確認。バイオエタノールや、ブラジルが採用した地上デジタル放送の日本方式などで協力し、経済関係の強化を目指す方針でも一致した。
「大きな一歩」=県内遺族ら
麻生太郎外相とブラジルのアモリン外相が会談し、両国の司法問題を協議する作業部会を新設することで合意したことを受け、法律関係者や日本でブラジルとの犯罪人引き渡し条約の締結を求めている遺族からは「大きな一歩」と評価する声が上がった、
NPO法人国外逃亡犯罪被害者をサポートする会の山岡理恵理事長(41)=湖西市=は「今まで動きがなかったので、どうなっているかと心配した」と心境を明かし、「どれくらいかかるか分からないが、一歩一歩進んで最終的に犯罪人の引き渡しが両国間でできるようになればいい」と期待を込めた。
伯日比較法学会の渡部和夫理事長は「ブラジル人の日本への引き渡しは、憲法にかかわる問題なので安易にコメント出来ない」としながらも、「いわゆる『代理処罰』について国家レベルの話し合いが行われるのはいいこと。実務的な司法の整備につながれば」との見方を示した。