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移民に語らせる「芸術」=演出なし、そのまま=テレビ画面に映し出す=実績あるフレデリコさん=昨年、文化省から受賞

2007年8月24日付け

 ブラジルに暮らす日本人をビデオ取材するブラジル人芸術家がいる。フレデリコ・カマラさん、三十六歳だ。フレデリコさんの芸術は、取材対象に語らせ、それをテレビ画面に映しだす、というもの。まったく作為、演出がないのが特徴だ。移民をテーマに今年はじめから取材をはじめ、現在は八人をビデオに収めた。目標は四十五人。
 「モナリザの絵はすばらしいけど、まさか見る人に話かけてくることはないよね。だけどこの方法なら…」。カマラさんは自身の作品スタイルをそう淡々と語る。
 展示スペース(空間)に等間隔に七つのテレビをおく。そこに取材した人の顔を映し出す。そしてその人に現在の生活と人生を語ってもらう。この方法で、〇四年に四十五人のデカセギ日系ブラジル人を取材した作品が昨年末、ブラジル文化省のコンクールで入賞した。
 ミナス・ジェライス州出身。祖父が第二次世界大戦中にイタリアからブラジルに移住した三世。芸術大学を卒業し、二十五歳でニューヨークへ。「労働ビザは取れなかったけど、新聞や雑誌のデザインをして働くことができた。アメリカは移民に対して冷たくて好きじゃない」。この経験がブラジル移住した祖父と重なり、作品の原点に。
 四年間のアメリカ生活を経てロンドンへ移住。あっさりと労働ビザがとれた。現在は、ロンドンの大学で芸術学部の博士課程を専攻している。休日にはよく美術館を巡っている。
 「日本にいるブラジル人は毎日仕事で忙しい。日本語を覚えることなく、日本人の友人もできないようだった」。京都、大阪、神戸を中心に日本に六カ月間滞在し、そう感じた。
 「見た目は同じでも、心にあるのは異国の文化」。デカセギをはじめ世界各国の移民が抱えるそんなギャップを表現する。このほどブラジル文化省から依頼されたテーマ、「ブラジルに暮らす日本人」もそれにつながる。
 フレデリコさんの作品は、来年、サンパウロかリオで発表される。「日本で取材した日系人とブラジルにいる日本人を相互に映し出す作品にする予定。今年の九月ごろまでには取材を終えたい」と顔を引き締めた。