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サンパウロ市=オートバイ事故が急増=社会問題に発展=毎日1人死亡、25人重傷=モトボーイに同情の目も

2007年8月25日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】オートバイが手軽に購入できるようになったことで若者の間でブームとなり、さらにモトボーイ(バイクによる宅配)の新職業が定着したことでサンパウロ市内はバイク人口で溢れている。それと比例して事故も急増し、社会問題に発展している。サンパウロ市当局の統計によると、サンパウロ市では毎日一人がバイク事故で死亡、二十五人が重傷を負って病院に搬送されている。歩行者の轢死事故に次ぐ高率となっている。さらに重傷者のうち三人は身障者となり、一生車椅子生活を強いられている。
 サンパウロ市当局によると、バイクによる交通事故死は二〇〇三年に一二六人、〇四年は二一〇人だったのが、昨年は三八〇人にはね上がった。病院に搬送された負傷者は〇三年の二五九〇人から昨年は三六九二人となった。今年五月までは一七八四人となっており、救出作業などで市財務局の出費は年間四〇〇万レアルを超えている。
 クリニカ病院の緊急病棟科の外科医によると、毎週五十人以上のバイク運転手が手術台に上り、そこで死亡しなければ、半身不随や内臓破裂などの後遺症に悩むことになるという。
 エスタード紙の取材班が八月七日から十四日間、消防の救急部隊に同行取材したところ、この期間に五九一件のバイク事故に出動した。いずれも重傷事故で、このほか三〇件以上の軽傷事故が軍警などにより処理された。これらの事故でバイクを運転していた三人が即死、一人が病院で息を引き取った。さらに一人が重体に陥っており、二人が命に別条はないものの、内臓破裂で一生闘病生活を強いられる。
 即死者の中には女子大生も含まれている。三日前に十九歳になったばかりの学生は十四日、勤務先のボン・レチロ区の洋品店に向かっていた。午前七時四十五分ごろバイクの前に飛び出した乗用車に行く手を遮られたためカーブを切ったところ、対向車線のトラックと接触し押し潰された。被害者は将来、女子プロサッカー選手になるのが夢だった。
 市当局によると、バイクの事故の五二%が乗用車などとの接触によるもので、追い越し運転が原因だという。追い越し運転はあたかもバイクの特権だと思われているため、ほかの車とのトラブルが相変わらず多発している。バイクは走行中前を遮ったり邪魔をした車に対し、車体を蹴飛ばしたりサイドミラーを壊すなどの行為に出てひんしゅくを買っている。
 しかし道交法でバイクは車線間での追い越し運転を禁止していることはあまり知られていない。取締りに手が回らないため徹底されていないのが実情だ。
 いっぽうで配達のスピードアップを求められているモトボーイに同情する向きも多い。彼らは時間給六レアルでサンパウロ市内を駆けめぐり中には一日当り一〇〇キロの走行をこなす者もいる。
 当局ではモトボーイは十五万人から三十万人が実在するとみているが、登録をして営業権を得ているのは三四九五人となっている。モトボーイの総数を十五万人とすると、わずか二・三三%に満たない。残りは全て非合法のモグリ営業だ。
サンパウロ市では合法化するためモトボーイ規制法を制定したが、取締りが徹底化されず、有名無実の状態で宙ブラリンとなっている。
 サンパウロ市交通局ではバイクによる事故減少を図るためにはバイク専用車線の設置が不可決だとしている。専用車線は一年前にスマレー大通りで試験的に新設された。事故が目立って減少し関係者にも好評を博したことで、ほかの幹線道路でも設置する動きが出ている。
 昨年のバイク事故での死亡ランキングは、マルジナル・ピニェイロス(一八人)、マルジナル・チエテ(一七人)、アリカンドゥバ大通り(一一人)、セナドル・テオトニオ・ビレラ大通り(同)、M・ボイ・ミリン通り(九人)が主で、これらに設置すべきとの声が強まっている。このほかヴィンテ・エ・トレス・デ・マイオも計画に含まれている。