2007年9月1日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙八月三十一日】ルーラ大統領は三十日、生活扶助金などへ充当する二〇〇八年度社会福祉予算を四七億レアル増額し、総額一六五億レアルとする来年度予算案を要求した。増額予算は、四つのブロック社会を構成する国家計画を実施し、一七五万人の青少年に就学の機会を与えるためとされる。これまでの生活扶助金制度にも、上限と下限の調整を行う。ルーラ大統領は、社会政策の基本概念は現政権の遺産であるとし、ヴァルガス政権の社会政策に並ぶものとして後世に語り継がれるものになると述べた。
ルーラ大統領は、餓死線上にあえいでいた八〇〇万世帯の国民を救ったことで、ブラジル史に永久に名が残るという。大統領が遺産とする社会福祉の基本政策を守り、全閣僚と連立与党議員はこれを座右銘とし毎朝拝めと命令した。
これまで生活扶助金の対象外にあった十五歳から十七歳の未成年も、制度に加えられることになった。この年齢層はこれまで、生活苦のために半数が義務教育を中退していた。さらに高校進学への奨学制度も、検討している。
これまでの生活扶助金の一人当たり基本額を一五レアルから一八レアルに引き上げ、上限を九五レアルから一〇二レアルとする。また格差是正のため奴隷解放の現代版「四つのブロック社会」プランを設け、貧困からの解放を行う。
マンテガ財務相は新しいタイプの経済発展「福祉社会計画」を立案するという。経済発展は所得格差の是正と平行し、貧困層の削減を至上命題とする。
大統領は近く、「四つのブロック社会」プランに対する包括案を、農地改革省を通じて上程する。全国一八四八郡の土地で、農地解放を行う計画らしい。二〇一〇年までに一八〇万世帯の小農世帯を入植させ、五〇七カ所のキロンボが全国に造成される。
しかし、農地改革と入植計画は具体性が全くない。どこに学校を建て、どこから電気を引き、薬局や保健所はどこに設置するのか。どこから飲料水を引き、どこへ下水を流すかなどを考えると、入植できる場所は国内にない。これまで営農指導や農業融資がなく、農業インフラもない原野にいきなり入植者を放ち、後は野となれ山となれの無責任な農地改革を繰り返すのだろうか。
政府が社会政策で力を入れているのは、社会発展のけん引車といわれる教育。複数年予算として七〇九億レアルを計上。小中学へ三二六億レアル、大学へ二九九億レアル。二〇一一年には、所得が均衡配分され、教育に力を入れた結果が出るという。経済成長のための人材も輩出され、貧困層といわれた一般庶民の消費パワーが出現する。
最低賃金は二〇一一年に五三〇レアルになる。経済成長率は、世界経済に異変がなければ五%を達成する。労働者党(PT)政権の目玉であった初就職プランは〇八年に廃止する。計画は二六万人の雇用創出であったが、成果は三九三六人に留まり、失敗に終わった。
初就職プランは、企業が単純労働者に関心を示さなかった。それで政府は、労働予備軍の青年たちに基礎教育の徹底とIT職業指導を行った。全国各地に国立ソフト専門学校が開校されたので、若いIT技術者が続々と巣立っている。