2007年9月5日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙八月二日】ルーラ大統領のラテン・アメリカ訪問を地域の大同団結という人もいるが、ダンスパーティといったほうが適切である。キルチネル亜大統領の後を追ってメキシコとホンジュラス、ニカラグア、ジャマイカ、パナマの国々を歴訪した。
亜大統領は六日、ベネズエラのチャベス大統領を迎え、エネルギー確保のため融資を受けた。亜大統領は、メキシコのカウデロン大統領とも戦略協定を結んだ。両国は国連の非常任理事国入りで交互就任を約束し、ブラジルの非常任理事国入りに反対した。
また亜大統領は、ブラジルに前以って打診をせずにメキシコへメルコスル加盟を勧めた。だがカウデロン墨大統領は、伯亜両国へ等間隔で友好親善に努めた。ブラジルは、メキシコと締結した現通商協定の拡大を望んでいたからだ。
サンパウロ市で七月に開催された伯墨事業家会議でブラジル政府は、二〇〇六年の両国貿易額六七億ドルを一〇年に倍増する計画を発表した。メキシコがメルコスルに加盟しなくても両国の貿易を拡大できると、ブラジルはみている。
またメキシコのメルコスル加盟は、域内関税協定があるため現実には不可能である。メキシコも同様に米国やカナダとともに自由貿易協定を結んでいる。それでも亜国がメキシコをメルコスルへ招いたのは、ブラジルの影響力を封じ込めるためと思われる。
亜国は、ベネズエラから経済危機を救ってもらった。さらに亜国は六日、一〇万ドルの亜国債をベネズエラに購入してもらった。まだある。チャベス大統領の南米ガス・パイプライン計画が動き出す。これでブラジルのメルコスルへの影響力は縮小した。
しかし、ラテン・アメリカのダンスパーティは、賑やかになりそうだ。チリ政府がボリビア政府へエネルギー協定の締結を提案した。これには後日談がある。エクアドル政府やペルー政府、コロンビア政府もボリビア政府へ協定締結を提案した。
南米エネルギー協定は、ブラジルを除け者にして包囲協定を目論んでいるらしい。チリ政府は、エネルギー危機でワラをもつかむ思いである。これまでチリへガスを供給していた亜国が、エネルギー危機に見舞われているからだ。
ボリビアは前世紀、対チリ戦争で太平洋への出口を失い、大陸の中へ閉じ込められた。積年の恨みがあるボリビアが、チリに塩を供するとは思えない。必ずチリの申し入れを、モラレス大統領の教祖チャベス大統領に打診する。
このような駆け引きの中で影響力は、言うのも可笑しい。大同団結などと寝言は、言っていられない。どこも自国の生き残りに夢中である。それでもブラジル政府は南米のリーダーの夢を捨てられず、おめでたいラテン・アメリカ同盟の根回しに奔走するらしい。