ニッケイ新聞 2007年9月7日付け
愛媛県人の百年を記録に残す――。愛媛新聞報道局社会部の高橋士朗副部長(42)が四日、県人移民を取材し、同新聞紙上で連載を行うため、約一ヵ月間の滞在で来伯した。愛媛県人会(藤原利貞会長)では笠戸丸で来伯した県人もいることから、来年の日本移民百周年に合わせて「県人百周年記念誌」を編集する準備を進めており、高橋さんは、編纂のアドバイザーとして記念誌作成にも携わる。「どっちにしても読者に興味を持って読んでもらえるものを作りたい」。滞伯期間中に国内十八カ所をまわり、県人の足跡を追う。
高橋さんは、四年前の県人会創立五十周年の際にも来伯しており、今回が二度目。藤原会長が訪日した際に、愛媛新聞社を訪れて、社長直々に記念誌作成への協力を仰いだことが、今回の渡伯につながった。
「移民全体の話はいろんなところで出ているので、愛媛県人に焦点をしぼって紹介したい」と高橋さん。バストス、プレジデンテ・プレデンテ、ロンドリーナ、ペレイラ・バレットやサンタカタリーナ州サンジョアキンなど、各県人会支部や県人を訪ねて移動する。
「笠戸丸移民の入植当時の話や、心に残るエピソードなど幅広く集める。イメージに合うものを探すのではなくて、出てきた中から面白いものを拾っていきたい」。
デカセギが「ほとんどいない」という愛媛県。高橋さんは、「これだけ県人移民が活躍していても(日本の)県民は関心が少ない。欲張らずに、地球の反対側にいる県人の姿を率直に伝えたい」と抱負を語った。
藤原会長は「これまで何も(記念誌などを)作ったことがないし、百年目でやらなければ今後もできないかもしれない」と百周年記念誌作成の動機を語り、「いい助っ人ができた」と高橋さんに一目置く。
同県人会では、今年二月に記念誌編集委員会が結成されて原稿も集まり出しており、資金は県人を中心に寄付を募る予定だ。「来年の六月までに完成させたい。棚に飾る歴史書でなくて多くの人に読んでもらえる一冊を」と、藤原会長は構想を話した。
記念誌作成には、愛媛大学法文学部の和田寿博准教授の協力も確約されており、手伝いにと稲田綾乃さん(23)が同校から県人会を訪れている。
五日には、同県人会会館で高橋さん、稲田さんの歓迎会が行われ、これからの取材の門出を祝した。