ニッケイ新聞 2007年9月7日付け
カネボウ・ド・ブラジルの継承会社である「KDBフィアソン社」(西尾立彦社長)が好調な業績を続けている。レアル高に伴う外国勢との競争にさらされる紡績業界の中、同社の昨年度営業利益率は一五・八五%と、ブラジル全体でもトップレベル。分離独立から一年半、これまで続けてきた組織改革と合理化の努力が身を結び始めている。KDB初代社長で現会長の高橋総八郎氏に聞いた。
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親会社の繊維事業撤退にともない、二〇〇五年十二月にMBO(経営人による企業買収)で分離独立、新たな一歩を踏み出したKDBフィアソン。現在はサンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポスの本社・工場のほか、ミナス州カジュッペでも操業しており、従業員数は六百五十人。
昨年十二月にはブラジル進出から通算して五十周年を祝った。昨年度は売上高六千八百万レアル、営業利益一千八十万レアルで、営業利益率一五・八五%を達成。今年はレアル高による輸入品の急増で厳しい状況の中、上半期の営業利益率は約一三%と業界トップレベルの業績を維持した。
〇〇年のブラジル赴任以来、同社の組織改革に携わってきた高橋会長は、現在までの歩みを「『共同体』から『機能体』への転換」だったと説明する。
地域の地元日系社会とともに〃共同体〃のように発展し、古参進出企業の一つとして好業績を続けていたカネボウだが、九〇年代に入ると日系紡績各社の中でも下位に落ち込むなど低迷した。
生き残りをかけ、目標達成と顧客満足を追及する〃機能体〃へと転換を目指した。〇一年のサンパウロ市事務所閉鎖、サンジョゼ工場への本社機能統合を皮切りに、成果主義の導入、会議・資料のポ語、英語への変更など、よりブラジルへの現地化を進めた。
「ほとんど全部やり直したぐらい」と振り返る高橋氏。日本語からの切り替えは一方で、若い日系の人材登用にもつながったと評価する。
十八人中十七人が日系だった幹部社員は五人に削減。現在、事務所の八割、工場従業員の九八%が非日系。高橋氏は「日系、非日系ということでなく、経営力のある人にブラジルで育ってほしい」と話す。
テレビなど次々と技術革新が進む業種と違い、「紡績のような既に成熟した集約型伝統産業ではブラジル化していくことが必要」と高橋氏。「技術や管理ノウハウの移転は既に終わっている。それが独立して花開いたということではないか」と述べ、さらに「ブラジルでは紡績はまだ需要があり、成長する産業。企業人としてブラジルに根付かせていく使命がある」と強調した。
親会社からの独立という〃異色〃の道を選び、日系企業のモデルケースの一つとして歩みはじめてから一年半、「カネボウ」のブランド使用を停止して八カ月が過ぎた。今年四月から会長になった高橋氏は「先輩が技術、ノウハウを導入して育てた産業。会社の名前は変わりましたが、元気に根付き育っていることを伝えたい」と話した。