ニッケイ新聞 2007年9月11日付け
なぜ今ごろ、すでに亡くなった女性歌人の歌集を出すのか―。
「歌を詠むことは自分がどういう人間として生きるか、人間としてのアイデンティティーを求める作業」と、弘中千賀子、陣内しのぶ両氏の遺歌集を編集した前山隆さんは想いを話す。
「特に準二世は、小さい時から心の中に様々なコンプレックスを持ってきた。それこそが人間性を高め、立派な歌を作ることに繋がった」。
二人の歌を読み、日本の作品と比べて「すばらしい」ではなく、「日本人、日系人がここに生きてきたという存在証明、人間の普遍性の作業に感銘を覚える」という。「短歌は芸術というよりは人間的在り方の証明。その人となりを尊いものと高く評価する」。
前山さんの解釈を踏まえ、再び遺歌集を開いてみれば、感ずることは少なくない。 (稲)