ニッケイ新聞 2007年9月12日付け
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十一日】愛人へのお手当てと娘の養育費を息のかかった業者に肩代わりさせたとして、五日に上院倫理委員会で議員権はく奪が決まったレナン・カリェイロス上院議長(ブラジル民主運動党=PMDB)。議員権はく奪の最終決定が十二日の上院本会議で下される前に、議長の根回しや与野党間の水面下の動きが活発化している。
本会議での採決は無記名投票で行われる。上院議員八十一人のうち過半数の四十一人が賛成票を投じれば、議長は議員権はく奪となり、任期が二〇一一年までの議員権を失う上、一九年一月まで選挙に出馬できなくなる。十六日に五十二歳を迎える議長は、六十三歳まで政治生命を事実上絶たれることになる。
労働者党(PT)やPMDBの与党議員らは、議員権はく奪が濃厚になれば、緊急措置として採決前に議長が議員辞職することもありうるとみている。辞職により野党議員らのはく奪意欲を殺ぐのが狙いだが、それでも採決ではく奪が決まれば、前述の「制裁」が科される。
先週木曜日(六日)時点の楽観的予想とは違い、議長包囲網は狭まりつつある。フォーリャ紙が十日に六十七人の上議に聞き取り調査を行ったところ、三十三人が議員権はく奪に賛成の意向を示した。反対は九人、二十五人はノーコメントだった。
反対はPMDB七人とブラジル労働党(PTB)二人で全員が与党議員だったのに対し、賛成の中にはPT四人など与党議員が十一人もいた。上院は与党が五十、野党が三十一議席を占めるため、与党に裏切り者がでなければ議長ははく奪を免れる公算だ。
上院での勢力が弱く(十二議席)、強力な議長候補の擁立が見込めないPTは、カリェイロス議長の継続を望んでいる。議員権はく奪が決まった場合、ヴィアナ上議(PT)が五日間臨時議長を務め、後任の選出が行われる見通し。PMDBはサルネイ上議か娘のロゼアナ・サルネイ上議を担ぎ出す魂胆で、野党はヴァスコンセロス上議(PMDB)を支持している。
与野党とも党の結束を固め、いわゆる「裏切り者」を出さないよう手を回している。「誰もが議長席を狙える機会でもあるため、党でなく私腹と相談して投票を決めるのは嘆かわしい」とPTリーダーのサウヴァッチ上議は無記名投票の弊害を嘆いている。
カリェイロス議長は十日も八十人の上議一人一人に電話をかけ、身の潔白を訴えた。同日午後、議長の広報担当者は「議長は議員権はく奪を免れるかわりに辞職する気は毛頭ない」と声明を発表した。仮に今回議員権はく奪を免れたとしても、議長には他三件の不正疑惑の審理が待ち受けている。