ニッケイ新聞 2007年9月12日付け
【既報関連】立教大学ラテンアメリカ研究所が母体となった、プロジェクト「ブラジルにおける日系移民資料の分析・保存とデジタルアーカイブ構築・移民百年の軌跡」を実施するため、五日、日本から遠山緑生(のりお)慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ総合研究機構(DMC)専任講師と、山口真里DMC写真師が来伯。九日からバストスで移民史料のデジタル化を進めているとともに、講演会「移民研究データのデジタル化とインターネット上のアーカイブ」を、十四日午後三時から国際交流基金サンパウロ日本文化センターで開催する。聴講無料
同プロジェクトは、カンポ・グランデ(南マ州)とバストスの二移住地で、重要な文献や写真のデジタル化を目指すもの。期間は今年の三月から二年間で、予算は約八百万円。内容は実態調査、家族史とデジタルアーカイブ化に分けられる。
六日、遠山さんらほか、プロジェクトを分担している丸山浩明研究代表(立教大学ラテンアメリカ研究所所長)、渡辺伸勝さん(関西学院大学大学院の博士後期課程)、根川幸男さん(ブラジリア大学外国語・翻訳学部日本語学科助教授)が集い、打ち合わせが行われた。
「インターネットで活用できるようにするのが最終点」と遠山さん。日系人だけでなく、社会学者や今の日本人にとっても意味があり、知的好奇心が満たされる史料が多い一方で、「閉じていては情報でない。知りたいと思うものを(ネット上で)検索できるかどうかで変わってくる」と、デジタル化からさらに一歩進んだ目標を掲げた。
山口さんは、寸法が大きく、素人では扱いにくい史料のデジタル化を進める。
実態調査を担当している渡辺さんは「日系人の〃日系人性〃、独自のアイデンティティーの有無、強弱を計るための質問を盛り込みました」。九月末までの一カ月で百人のデータを集める。「地元の八十年誌編纂委員会が協力してくれて、理想的な互恵的関係ができている」と満足そうに現状を話した。
「デジタル化をする技術者と移民研究者、今までバラバラだったそれぞれの専門家が共同して作業する形を、ブラジルはこれから導入できるのか」。遠山さんは講演会で、バストスでの活動をふまえてのこれからの展望を話したいとしている。