ニッケイ新聞 2007年9月18日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十七日】ルーラ大統領は十六日、暫定金融取引税(CPMF、通称小切手税)の徴収期限を二〇一一年まで延長する連邦令補足案の国会承認を得るため、下院では表決に関する暫定令案を撤回し、上院では上程案の一部変更で譲歩する意向を明らかにした。政府は、同補足案で同税の期限延長が下院で二十日までに可決できるとみている。しかし、野党が優勢な上院で補足案の手直しを求め、下院へ差し戻す可能性もある。上院での交渉は十七日から始まるが、金融税を二〇〇八年から現行税率〇・三八%を〇・三六%へ引き下げる可能性も政府は示唆している。
年間二五八〇億レアルに上る暫定金融取引税は有力財源の一つであり、脱税防止の砦でもあるので、政府は同税の存続にこだわる。同補足案の審議前に四つの暫定令が表決される。その一つ経済活性化計画(PAC)の六三億レアル交付を除き、三案を撤回するらしい。
同補足案通過のために政府は、連立与党議員に政府要職のご褒美を用意した。さらに同案が通過すれば、協力者は次期選挙で資金の優遇も受けられる公算である。同案の承認は二回までの表決で、下院では五一三票のうち三〇八票、上院では八十一票のうち四十九票の賛成票を獲得しなければならない。
プラナウト宮の要請を受けてキナリア下院議長(労働者党=PT)は、週三回が慣例の表決を八回にする緊急国会の召集手続きを行った。手続き上では表決を十八日夜に始める。しかし、実際は十九日から二週間の期限で、二次投票までできる。賛成三〇八票を得れば一次で承認となる。
野党は対抗策として、ノロノロ作戦に出るらしい。同補足案が期間中に必要数を獲得できない場合、プラナウト宮はホゾをかむ。問題は上院といえそうだ。カリェイロス上院議長(ブラジル民主運動党PMDB)の無罪判決以来、上院の空気は険悪。上院での承認に必要な四十九票は、四十一票に留まっている。議長の判決前は四十三票と踏んでいたが、後退したのだ。
議長の無罪判決は、野党上議の心証を深く傷つけたらしい。社会保障院の改革で政府に歩み寄りをみせた野党ブラジル民主社会党(PSDB)と民主党(DEM)は、小切手税で徹底抗戦を宣言した。たとえ州知事から要請があっても、応じないと心を閉ざした。
小切手税を否決するために、野党は三十三票を集めればよい。上院議長追放には四十一票が必要であったが、小切手税は事情が異なる。上院議長か小切手税かで、政府は計算を見誤ったのではないかという。
一方、国庫監査局は一九九七年から〇六年に徴収された小切手税一八五九億レアルの一八%に当る三三〇億レアルは、財政黒字確保に徴用されたという。他は、公債の金利支払いに使われたようだ。政府は小切手税を、医療費や社会保障費、貧困対策の財源とする予定であった。
小切手税は本来、医療予算の財源として立案されたものである。それがいつしか、公債の金利や財政黒字へ流用されるようになった。本来の趣旨から大きく外れた小切手税は、一兆一五〇〇億レアルといわれる政府債務の削減と財政黒字に利用されているようだ。